文学作品が伝えるエジプトの思想上の「革命」
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「エジプト第1中間期」の記事における「文学作品が伝えるエジプトの思想上の「革命」」の解説
数百年以上にわたって続いた古王国の安定が失われたこと、そしてその後に訪れた政治混乱はエジプトの社会を動揺させた。古王国時代の王朝の交代等が主として政府内部の事件であったのと異なり、第6王朝末期以降の混乱は広範な人々を巻き込む戦いを引き起こした。こうした状況は「社会革命」とも呼ばれており、エジプト人の社会、思想に重大な変化を齎した。 当時の雰囲気を伝える文書として『イプエルの訓戒』と呼ばれる文学作品が知られている。 旧秩序の崩壊と社会の混乱を指摘し、現状の変革などを主張するこの文書には、同一の導入句を反復する形式に沿ってエジプトの混乱が描写されている。それによれば門番や職人や洗濯屋が自らの仕事をせず掠奪に出かけており、海上の支配権はクレタ人に奪われ、下エジプトには蛮族が侵入して「エジプト人となった」。掠奪者は至るところに現れ、ナイルが氾濫しても土地を耕すものも無く、貴族たちは嘆き、貧乏人は喜びに満ちた。富も失われ、死者をミイラとするための材料も無く、上エジプトは内戦のために租税を納めなくなった。老人も若者も「死んでしまいたい」と言い、幼児は「産んでくれなければよかったのに」といい自殺者があふれた。呪文は民衆に知れ渡ったために効力を失い、王は民衆によって廃され、貴婦人は筏の上に住み貴族達は強制労働に従事していたという。 貧乏人による掠奪、貴族の没落、納税の停滞などを嘆くこの文書は、古い有力者の立場を代弁したものであると考えられるが、当時のエジプトを襲っていた厭世的な雰囲気をまざまざと知ることができる。また解釈を巡って議論のある文書ではあるが、『生活に疲れた者の魂との対話』と呼ばれる文書でも「善はいたるところで退けられ、地を歩む悪は止まるところがない。」と語られている。
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