教育技術法則化運動とは? わかりやすく解説

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TOSS

(教育技術法則化運動 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/04 10:16 UTC 版)

TOSS(トス、Teacher's Organization of Skill Sharing(教育技術法則化運動)の略)とは、向山洋一を代表とする、教師の教育技術についての方法(=指導法)を提唱する集団、およびその活動である。以前は、「教育技術の法則化運動」あるいは「法則化」と呼称していた

教育技術法則化運動

著書『跳び箱は誰でも跳ばせられる』において、「教え方さえ的確ならばどの児童にも跳び箱を3分で跳ばせることができる」とする方法を著した[1][注 1]。また、向山は、他にも教育技術・方法についての出版も行った[3]

これらの向山の活動を「教育技術法則化運動」と言う。なお「法則化」という言葉には批判(非難)もある[4]

1984年に向山が掲げた「教育技術の法則化運動」は以下の4つである[5]

  1. 教育技術はさまざまである。出来るだけ多くの方法を取り上げる。(多様性の原則)
  2. 完成された教育技術は存在しない。常に検討・修正の対象とされる。(連続性の原則)
  3. 主張は教材・発問・指示・留意点・結果を明示した記録を根拠とする。(実証性の原則)
  4. 多くの技術から,自分の学級に適した方法を選択するのは教師自身である。(主体性の原則)

[5]

「教育技術の法則化運動」は2000年に解散し、TOSSとして生まれ変わることとして、インターネットランド(TOSSランド)の運営を追加した[要出典]

TOSSに対する評価

疑似科学の拡大助長に対する批判

TOSSがEM(有用微生物群)についてその当初から環境教育として積極的に採り入れてきた[6]ことで、疑似科学を助長しているとの批判がある[7]。また、TOSSは、発達障害の子供を持つ保護者団体などから「偏見を助長する」との批判がある親学や、歴史的根拠がない、と指摘される江戸しぐさなども取り込んでいることでも批判を受けている[8]

水からの伝言」への疑似科学批判のなかで、「水からの伝言」についての授業実践例がTOSSランドに登録され、TOSS関連書籍の中でも紹介されるなど[9]、TOSSの活動のなかで用いられた[10]

また、科学者の間では疑似科学であるとの評価が定着したゲーム脳もまたTOSSでは広く取り上げられ、関連書籍や雑誌で紹介されてきた[11][12][13][14]

そして、ゲーム脳を扱ったコンテンツは2007年3月まで数件登録されたままであった[15]

また、文明史家の原田実によって歴史的、道徳的観点から疑問点が指摘された江戸しぐさについてのコンテンツも存在する[16]

加えて、前記のEMについて、TOSSランドに環境教育のサブカテゴリとしてEMを明示して多数のコンテンツを登録している[17]。こうしたことから、TOSSは疑似科学を排除したわけではなく現在でも拡大助長していると批判する人々は判断している。そのほか、疑似科学と一般に判断されているものでTOSSで扱われているものに脳内革命が挙げられる[18][19][20][21][22][23]

これらの疑似科学は、主に道徳総合的学習において取りあげられる割合が高い。背景には、教師が、児童に教える過程では、単純で分かりやすく教えることを求める傾向があり、科学的な検証を経ることなく、無批判、盲目的にTOSSの指導法を信じているものと考えられ[24]、TOSSが本来目指しているとされている「追試による指導法の発展」が、機能していないと批判者は判断している。

また、向山とTOSSが確信的なオカルティズムに基づいているとし、これを愚民教育であるとする批判もある[25]

その他

  • 向山洋一は、教育技術を医療技術にたとえ「盲腸を手術する技術は外科医には小さな技術であろうが、盲腸を手術できない外科医を誰も外科医としては認めない」と述べている[26]
  • 算数の「問題解決型学習」を批判している[27]

関連雑誌

  • 月刊『教室ツーウエイ』誌(明治図書)
  • 月刊『家庭教育ツーウェイ』誌(明治図書)
  • 月刊『向山型算数教え方教室』誌(明治図書)
  • 月刊『教育トークライン』誌(東京教育技術研究所)
  • 季刊『TOSSインターネットランド』誌(東京教育技術研究所)
  • 隔月刊『向山型国語教え方教室』誌(明治図書)
  • 隔月刊『教育コミュニティ』誌(東京教育技術研究所)
  • 季刊『TOSS特別支援教育』誌(東京教育技術研究所)

脚注

注釈

  1. ^ ただし、小学校の体育授業における負傷事例はバスケットボールと跳び箱が大半を占める[2]

出典

  1. ^ 向山洋一. 跳び箱は誰にでも跳ばせられる. 明治図書出版 
  2. ^ 日本スポーツ振興センタ
  3. ^ 向山洋一 (1985年). 授業の腕をあげる法則. 明治図書出版 
  4. ^ 向山洋一 (1987年). 向山洋一・大学での私の講義-授業について-. 明治図書出版 
  5. ^ a b 『教育トークライン臨時増刊号』(2013.4) 東京教育技術研究所
  6. ^ 向山洋一 (1996年). EMを学び、教える ーー環境教育はこれで一変する. サンマーク出版 
  7. ^ 斎藤貴男『カルト資本主義――オカルトが支配する日本の企業社会』(文藝春秋、1997年/文春文庫、2000年)第5章
  8. ^ TV見せぬ「親学」や江戸しぐさが教育現場に広がる理由、週刊ポスト、2017年3月17日
  9. ^ 師尾喜代子編『TOSS女教師の読み聞かせシリーズ2 教室がシーンとなる“とっておきの話”100選 中学年編』(明治図書、2002年)において、『水も感じる「ありがとう」の言葉』という話が掲載されている。師尾はTOSS中央事務局に所属している。
  10. ^ 菊池誠『「ニセ科学」入門』(第六十一回物理学会年次大会シンポジウム「『ニセ科学』とどう向き合っていくか?」、2006年3月)で言及されている。また、毎日新聞『理系白書の理系白書’07:第1部 科学と非科学/2 教室にニセ科学 - 毎日jp(毎日新聞)[リンク切れ]』(2007年2月7日)にも同様の記述がある。
  11. ^ 森本雄一郎 (2004-12). “ゲーム脳の恐怖から子供を守ろう!”. 楽しい体育の授業 (明治図書) (NO. 181). 
  12. ^ 河田孝文(編著) (2005年6月15日). <インターネット活用授業集成>8 道徳授業はインターネットで進化する. 明治図書 の中で「ゲームのし過ぎで脳が壊れる!〜ゲーム脳の恐怖〜(TOSSランドNo2210270)」が紹介されている。
  13. ^ 板倉弘幸 (2005年8月26日). “IV 学力保障と教科指導の原則を類書から学ぶ”. 向山流読書法で学級・授業づくりの基礎を磨く 上巻. 明治図書 において、『ゲーム脳の恐怖』が取り上げられている。
  14. ^ 瀧尾恵美子 (2006年3月31日). “ゲーム脳になってもいいのですか?”. In 浅川清. 女教師のワザ100シリーズ2 -- 学級PTAでする“心に残る話材”100 (3版 ed.). 明治図書 
  15. ^ 例えば、森泉真理 (2003年2月14日). “ゲームについて考えよう(TOSSランドNo2220075)”. 2007年3月3日閲覧。 など。一方、松村雪子 (2003年1月12日). “ゲームのし過ぎで脳が壊れる!〜ゲーム脳の恐怖〜(TOSSランドNo2210270)”. 2007年3月3日閲覧。は2007年3月以前にTOSSランドからは削除されていた。なお、2007年3月中旬になって、TOSSランドの検索結果でゲーム脳関係のものが表示されなくなった。
  16. ^
  17. ^ タブなし → 環境の授業 → EMで2007年2月末で17件登録。
  18. ^ 岡田健治 (1998年6月1日). “ライフスキル」で「しなやかさ」を育てる”. In TOSS道徳教育研究会(編). TOSS道徳「心の教育」1 -- 生き方の原理原則を教える教育. 向山洋一(監修) (9版 ed.). 明治図書 
  19. ^ 久保宏行 (2006年2月2日). “IV 1日1時間! 子どもが「熱中」する授業の演出ライフスキル”. In 伴 一孝(編). これ一冊で大丈夫! 若手教師のための指導力アップ講座11 -- 修了式の日に涙を流すための本. 明治図書 
  20. ^ 岡田健治 (2006年3月22日). “第3章 困難に打ち克つ力をつける授業をしよう!”. 向山実践の原理原則を究める 5 -- 教師力を最大限に高める秘訣. 明治図書 。該当箇所が明治図書のウェブサイト[リンク切れ]で確認できる。
  21. ^ 久郷佳恵 (2005年8月23日). “TOSSランド活用術—使わないと絶対に損をする”. In 法則化中学信州・JHS−長野・JHS−上田. 役に立つ教育技術 いくつ持ってますか18 中学学級経営 生徒と絆をつくる基本キー. 明治図書 。該当箇所が明治図書のウェブサイト[リンク切れ]で確認できる。
  22. ^ 河田孝文(編著) (2005年6月15日). <インターネット活用授業集成>8 道徳授業はインターネットで進化する. 明治図書 の中で複数の「脳内革命」を使用したTOSSランドのサイトが紹介されている。
  23. ^ 平松孝治郎 (2006年-06). “脳内革命の話を、一年に一度はしたい”. 教室ツーウェイ (明治図書) (No.325). 
  24. ^ 左巻健男「お手軽化が蔓延する教育現場の怪」(『論座』2007年2月号)
  25. ^ 左巻健男「お手軽化が蔓延する教育現場の怪」(『論座』2007年2月号)および斎藤貴男『カルト資本主義』。
  26. ^ 向山洋一 (1991年). 教育技術入門(教育技術文庫). 明治図書出版 
  27. ^ 向山洋一著「産経新聞連載」2005年11月

関連項目

外部リンク


教育技術法則化運動

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/23 22:17 UTC 版)

TOSS」の記事における「教育技術法則化運動」の解説

著書跳び箱誰でも跳ばせられる』において、「教え方さ的確ならばどの児童にも跳び箱を3分で跳ばせることができる」とする方法著したまた、向山は、他にも教育技術方法についての出版行った。 これらの向山活動を「教育技術法則化運動」と言う。なお「法則化」という言葉には批判非難)もある。 1984年向山掲げた教育技術の法則化運動」は以下の4つである。 教育技術はさまざまである出来るだけ多く方法取り上げる。(多様性原則完成され教育技術存在しない。常に検討修正対象とされる。(連続性原則主張教材発問指示留意点結果明示した記録根拠とする。(実証性の原則多く技術から,自分学級適した方法選択するのは教師自身である。(主体性原則) 「教育技術の法則化運動」は2000年解散しTOSSとして生まれ変わることとして、インターネットランド(TOSSランド)の運営追加した[要出典]。

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