政治的・経済的問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/02 00:45 UTC 版)
「ナブッコ・パイプライン」の記事における「政治的・経済的問題」の解説
ナブッコ・パイプラインのガス供給先は、欧州南東部・中央部の一部の国に限られており、採算が取れるのに必要な量のガスが供給される見通しがないことから、非経済的なプロジェクトであると批判されている。2010年1月現在、供給源に名乗りをあげているのはアゼルバイジャンだけであるが、カスピ海にある同国シャフ・デニズガス田 (Shah Deniz gas field) の生産量は年間80億m3に過ぎず、しかもロシアが既に70億m3分を購入済みである(ナブッコ計画のガス供給総量は310億m3)。こうした中、イランのマヌーチェフル・モッタキー外相は、「ナブッコ・パイプライン計画にイランが参加しないということは、要するにナブッコはガス無しのパイプラインになるということにほかならない。」と述べており、ロシアのプーチン首相も同様の発言をしている。ロシア連邦議会国家院(下院)エネルギー委員会のイヴァン・グラチェフ副委員長は、ナブッコ・プロジェクトの実現性に疑問を投げかけ、同プロジェクトはロシアにプレッシャーをかけるのが目的のプロジェクトであるとの見解を示している。こうした中、ロシアとアゼルバイジャン・トルクメニスタン両国は2010年以降のガス売買契約を結んでおり、これはロシアがナブッコに供給される可能性のあるガスを押さえるためとの見方もある。なおアゼルバイジャン側は、ガスは商業的にもっとも魅力あるルートだけに供給されるとの考えを繰り返し表明している。中央アジア・中国パイプライン (Central Asia – China gas pipeline) の開通およびサウス・ストリーム建設の合意が為されたときが、ナブッコ・プロジェクトの終焉を意味するとの見解もある 。 一方で、ドイツのRWE社は、ナブッコ・パイプラインはサウス・ストリームやその他のパイプラインと比較しても輸送料金が安価であると主張している。RWEの試算によると、シャフ・デニズガス田から欧州までの輸送料は、ナブッコで1立方メートル当たり77ユーロのところサウス・ストリーム106ユーロである。(注:この試算はナブッコ・パイプラインの建設費用が、計画当初の80億ユーロから2011年に120億-150億ユーロに引き上げられる前のものである。)
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