捕虫嚢の形態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 06:39 UTC 版)
タヌキモ属にみられる吸引型の捕虫嚢は、さまざま植物でみられる捕獲用トラップの中でも、最も洗練されたものであるとされる。捕虫嚢は匍匐茎やシュート、塊茎、葉状茎(phylloclades)につき、通常ソラマメに似た形態をしている。ただし種によっては多様な形態をとる。 捕虫嚢の外壁(嚢壁)は2層の細胞からなり、透明である。しかし、動物プランクトンなどの獲物を捕らえた捕虫嚢は黒色になる。嚢壁は捕虫嚢内部が減圧状態になっても、袋形を維持するのに十分な剛性をもつ。捕虫嚢の入口には円形または楕円形の舌状の扉があり、その上部は捕虫嚢本体と、蝶番の役割を果たす柔軟な細胞によってつながっている。入口下部の扉と接触している部分は厚くなっている。接触部の中央に沿って柔らかい組織が伸びており、閉鎖時には空隙をふさぐ。扉の下端のやや上にも、柔軟な細胞が横一線に端から端まで並んだ部分があり、扉がここで曲がることによって空隙をなくす役に立っている。また捕虫嚢の外側の細胞から、糖類を含む粘液を分泌し、入口の密着や糖による獲物の誘引などの役割を果たしていると考えられている。 地生種は、一般に小型(0.2-2.5mm)の捕虫嚢を持つ。入口には曲がったくちばし状の構造があり、獲物を誘導するはたらきと、ごみなどの不要な物質が捕虫嚢に入らないように防いでいるものと考えられている。水生種の捕虫嚢はより大型化(通常0.2-6.0mm、最大1.2cm)し、くちばし状の構造はもたないが、分枝するアンテナ状の構造を持つ。そのアンテナ状構造には、獲物を捕虫嚢の入口に誘導する役割や、ごみなどによって入口を閉じる反応の引き金が引かれないように防ぐ役割がある。着生種がもつ捕虫嚢は、水生の種のものよりは小型(0.4-2.5mm)であり、分枝しないアンテナ状構造が入口にかぶさる。水生種のものと同様の役割を果たしているが、さらに毛管現象によって入口との間に水を貯める機能があり、捕虫を助けているものと思われる。 また、U. hamiltonii など、大小2つのタイプの捕虫嚢をもつ種もある。
※この「捕虫嚢の形態」の解説は、「タヌキモ属」の解説の一部です。
「捕虫嚢の形態」を含む「タヌキモ属」の記事については、「タヌキモ属」の概要を参照ください。
- 捕虫嚢の形態のページへのリンク