捕獲技術の進展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 14:32 UTC 版)
深海魚が獲得した低水温・高圧力環境への適応能力を解析するためには、できるだけサンプルを生きたまま捕獲し、地上の研究施設で長期間飼育できることが望ましい。捕食や産卵のために浅海に移動する種類は、通常のアクアリウム設備でもある程度の飼育が可能であるが、実際の生育環境における振る舞いが再現される保証はない。 しかし、深海魚を生体のまま捕獲することには実際上の多くの困難がある。もっとも重要な問題は浮上に伴う急激な減圧と海水温の上昇であり、多くの場合深海魚に対して致死的なダメージを与えることになる。また、強すぎる環境光や捕獲そのものによるストレスが、視覚や生理調節機能に影響を及ぼす可能性もある。 深海探査技術の発展とともに捕獲機器の開発・改良も進み、1970年代には低水温維持機能が備えられるようになった。1979年に報告された高圧維持水槽は1980年代にかけて改良が重ねられ、ソコダラなど浮き袋が発達した底生性深海魚の生体捕獲を可能としたが、長期的な飼育維持は依然として困難な状況が続いていた。 2000年代初頭に日本の海洋研究開発機構(JAMSTEC)によって開発された「ディープアクアリウム」は、深海魚の捕獲と高圧下での飼育を単独で行うための装置である。中心部分となる水槽は高圧に耐えるため球形をしており、200気圧の水槽内圧を維持できる。深海探査艇に搭載したディープアクアリウムで深海魚を捕獲したあとは、水槽内部の高圧環境を維持したまま地上に運搬、飼育を行うことが可能である。水交換や給餌も減圧を起こすことなく可能で、深海生物研究の新たな手段として期待されている。
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