成立年代の推定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 09:50 UTC 版)
真核生物の成立年代は未確定ではあるものの、例えば真核生物に不可欠ないくつかの器官(例えばミトコンドリアや、ステロールを含む細胞膜)の成立に酸素が必須なことから、真核生物は24億年前の大酸化イベント以後、好気性条件下でおおまかに19億年前頃(原生代)には成立したとする説が有力である。一方で、真核生物は酸素が大気中に含まれていなかった大酸化イベント(Great Oxidation Event)以前の生活スタイル(嫌気呼吸)も保持しており、最初に誕生した真核生物は通性嫌気性生物であったと想定される。ちなみに大酸化イベント以前(太古代)の地球にもごく少量の酸素は存在していた可能性がある。ただ、真核生物を含め好気性生物が太古代にすでに存在していたかについては、それを明確に支持する証拠は現在のところない。最も古い真核生物の痕跡として、27億年前の地層から検出されたステランと呼ばれる真核生物由来の有機物質が一時期議論されていたが、その後これらの有機物質は当時のものではなく後世の汚染物質であると結論づけられた。現在、真核生物由来のステランとして認められた最も古いものは新原生代のものにとどまる。そのため、新原生代以前の真核生物の有無および実態について詳しくはわかっていない。 真核生物そのものの化石(微化石)は21億年前の地層から発見されている。ただし、これらの化石が真に真核生物由来かどうかはなお議論の必要がある。19億年前の地層から見つかった、コイル状の多細胞生物と推定されるGrypaniaは真核生物として一定の支持を得ている最古の化石の一つである。 真核生物の起源を分子時計を用いて推測する研究も行われている。ただし分子時計計算はステランなどの化学化石、および微化石の年代を基にしており、これら化石試料の選択次第で大きく計算結果が変動するため注意を要する(上述の否定された27億年前のステランもその例)。 ちなみに、動物や植物へ至る真核生物の多細胞化は真核生物自体の成立に比べて新しく、10億年前あたりを示唆する研究結果がある一方、上述のGrypaniaが本当に多細胞性の真核生物であった場合、多細胞化の起源が大幅に遡るため、結論は出ていない。
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