懐中時計時代~「ダラー・ウォッチ」
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「タイメックス」の記事における「懐中時計時代~「ダラー・ウォッチ」」の解説
1854年、「ウォーターベリー・クロック・カンパニー」(Waterbury Clock Company)がコネティカット州ウォーターベリーで創業。当初は置時計・掛け時計の生産を行っていたが、1877年から懐中時計の生産に着手、1880年には懐中時計部門として別会社の「ウォーターベリー・ウォッチ・カンパニー」(Waterbury Watch Company)が設立された。ウォーターベリーの生産方針は、当時のアメリカで進んでいた大量生産への指向であった。 1881年にニューヨークでインガーソル兄弟によって創立されたインガーソル(Ingersoll)は、アメリカで19世紀後期から勃興していたカタログ通信販売ビジネスを行う企業だったが、1892年からウォーターベリー・クロック(ウォッチ社ではない)に生産を委託し、大量生産による廉価型懐中時計「ユニバーサル」を売り出して成功を収めた。1894年のインガーソルによるウォーターベリー・クロックへの時計発注は50万個に及んだという。 そしてインガーソルから1896年に発売された懐中時計「ヤンキー」は、「ダラー・ウォッチ」の通称のとおり、1ドルという当時としても極めて低価格を実現した。文字盤は紙に印刷して糊付け、内部は簡素なピンレバー式脱進機構で、軸受けにはルビーなどの宝石を一切使わない「0石」の粗製品ではあったが、最低限の実用性と圧倒的低価格を両立させたのである。「ヤンキー」は1898年には年間100万個を売り、当時の大ヒット製品となった。 インガーソルは1905年に自社のイギリス工場を設立して「ダラー・ウォッチ」の現地組み立てを開始、こちらではやはり低価格の「5シリング時計」として成功した。この工場は1930年にイギリス企業に売却されている。 一方、ウォーターベリー・ウォッチは1880年代後期に量産路線で大いに成功を収めたが、1890年代になると経営不振に陥り、1898年にニューイングランド・ウォッチ(New England Watch Company)として再建される。同社は高価格帯へのシフトを図ったものの成功せず、1912年に倒産して操業停止した。
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