情報化社会における人権侵害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/12 10:15 UTC 版)
「人権蹂躙」の記事における「情報化社会における人権侵害」の解説
1990年代ごろからの情報化社会の急速な発展にともない、パソコン通信やインターネットなど、個人でも容易に表現活動を行うことができる場(双方向性の新たな「マスメディア」)を用いた「マスコミュニケーション」が急速に拡大した。これにともない、個人が望めば、大衆(マス)に対して自己の思想や意見の表明などを簡易かつ安価に行えるようになった。このような表現活動は、表現の自由(言論の自由、日本国憲法第21条1項)の範疇に属するものである。他方で、このような表現活動を通じて、他者のプライバシーを暴露したり、名誉を侵害したりするなど、他者の「人権」(それぞれ「プライバシー権」、人格権)の範疇に属する事項を抵触する事態が生じるようになった。 そして、パソコン通信やインターネット上でのプライバシー侵害や名誉毀損などに対して、相次いで訴訟が起こされている。裁判所の判断枠組みは、端的にまとめると次のように評することができる。つまり、プライバシー権に関してはいったん公開されてそれが侵害されるとその回復がきわめて困難になるため、他人の意思に反して開示することを、表現の自由の名の下で容易に正当化することはない。しかし、対等な私人間において、名誉権・人格権は侮辱的な発言等の言論によって侵害されたとしても、その後の表現活動(反論等)によって回復が可能である。したがって、「表現の自由」と「人格権」という対等な私人間での等価値な人権を、個別具体的な事情の下で比較考量したうえでの慎重な法的判断を行っている(等価値的利益衡量)。 また、プロバイダーがやウェブサーバーの設置者などが、インターネット上での情報流通について発生する他人の人権(権利・利益)の侵害に対して、迅速で適切な対応を行うことを目的として、2001年にプロバイダ責任制限法が制定されている。詳細は、この項目および外部リンクを参照のこと。
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