性淘汰との関連
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/16 15:01 UTC 版)
配偶者選択では、超正常刺激はさまざまな動物で見られる。ヒョウモンチョウの場合、表面はオレンジ色に黒いまだら模様があり、裏面はよりくすんだ色をしている。繁殖期の雄は黄色のヒラヒラ動くものに反応して引き付けられ、時には落ちる枯れ葉にも近づいて行くと言う。実際の交尾には、その後の匂いの刺激が必要であるが、雄が雌を追うまでは視覚刺激のみに反応する。そこで、ドイツのD.マグヌスはこのチョウを引き付ける要因を調べ、羽ばたきによる色の変化が重要である事を突き止めた。さらに詳しく調べた結果、最も雄をよく誘引するのは以下のようなモデルであった。 大きさは実際の雌の四倍(それ以下であれば、大きいほどよい) 黄色と黒が素早く入れ替わって見えるもの(形はどうでもよく、色を塗り分けたローラーを回転させても良い)。 その入れ替わりの回数は毎秒75回(それ以下なら多いほどよい)。 黄色の部分の斑点は無い方がよい。 このような形は実際の蝶の雌にはあり得ないから、これも超正常刺激の例である。この場合、いわゆる雌雄淘汰の原因になり得るから、チョウの雌にこのような進化が起こってもよいはずである。しかし、現実のチョウがそのようにはなっていないのには、いくつかの理由が考えられる。たとえば羽ばたき回数毎秒75回というのは、チョウの体の構造では不可能であろう。大きさについてもそれなりの制約があると考えられる。いずれにせよ、動物の体は異性の嗜好以外にも多くの決定要因があると考えるべきである。 このチョウの場合も、多分より大きくてよく羽ばたくものを選ぶ、という方向があるだけであって、恐らく4倍とか75回という数字は単にチョウの認識できる最大の値、という意味を持つだけだと考えられている。 しかし、定向進化説の例とされるオオツノシカや現生ではシオマネキのような、非実用的な構造は、このような実現されていない理想、あるいはその方向性によって引き出されたものと考えられる。
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