形態の特殊性について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/18 17:57 UTC 版)
本属の種はとにかくその姿が特異であり、たとえばVereschk et al.(2016)はその最初の1文で『その常軌を逸した外見から、世界中でもっとも異常なエビ(the most peculiar shrimps in the world because of their aberrant appearance)』であると記しているほどである。本属の動物の特徴は上記の通りだが、それがどのように普通のエビと異なるのかについて説明する。普通のエビの身体は前半の頭胸部と後半の腹部からなり、頭胸部には見かけ上は体節がなく、前端に目と触角、腹面に脚が並んでいる。後半の腹部には体節があって腹面にはひれ状の遊泳肢がある。本属では腹部はほぼ標準の構造を持つが、頭胸部にはかなり根本的な違いがある。 一般のエビの場合、頭胸部は全体を背甲(頭胸甲)が覆っており、体節が見えないのはこのためである。頭胸甲は普通のエビではその前端に、前に突き出した左右から扁平な突出部があり、これを額角という。背甲は腹部前端まで伸び、左右は膨らんでいて腹面までを覆う。左右の腹面側が膨らんでいるのはその内側の腔所に鰓が収まっているからで、この鰓は胸脚の基部から出てこの中に入っている。頭部と胸部は密着していて、以下のような附属肢、あるいはそれに由来したと考えられる構造がある。頭部には第1触角、第2触角、眼、大顎、第1小顎、第2小顎。胸部には第1-3顎脚と第1-5胸脚。この内の2対の触角と眼は背甲の前端から前に突き出す。ただし先述のように背甲前端が額角として突き出すため、やや下側から出る。大顎から第3顎脚までは口器となって眼と胸脚の間に収まる。胸脚は背甲の腹面から下に伸びる。ただし第3顎脚の外肢は胸脚と同じような形に発達するのが普通なので、腹面からは6対の歩脚が出ているように見える。 ところが本属では、まず口器より前の頭部が長く前に突き出している。それに額角もごく小さい。そのために頭胸部前端が細長く前に伸び出し、触角と眼だけがその先端に突き出した形になる。またそれらが他の附属肢から大きくはなれて位置することにもつながっている。また鰓がないために胸部の背甲もとても狭くなっている。更に後ろ2対の胸脚がないので見かけ上の歩脚の数も2対少なくて4対である。また普通のエビでは第1触角に下鞭(外鞭とも)があって途中で二又に分かれて見えるのが、本属にはないので単一である。浮遊性の小型エビ類としては本群に近縁なサクラエビやアキアミなどもあるが、それらが普通のエビの姿であるのに比べても本群は突出して異様である。
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