形式的平等と実質的平等
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 22:22 UTC 版)
「法の下の平等」の記事における「形式的平等と実質的平等」の解説
形式的平等(機会平等主義)とは、すべての国民に対して経済活動等の行為の機会を平等に与えようとする機会の平等を意味する。一方、実質的平等(結果平等主義)とは、すべての国民の経済活動等の行為の結果を平等にしていこうとする結果の平等を意味する。 憲法原理における平等原則は、すべての人の人格的価値は平等であるという理念を前提にしつつ、そもそもは国家による法律上の不均一な取扱いを禁ずるもので、それ以上に進んで実際上存在する社会的・経済的不平等の是正の要求まで含むものではなかった。そこでは国家の最大の任務は各人の自由な活動の保障にあり、それによる結果の不平等は各人の能力や働きによるものとして、各人の責任に帰せしめるべきという形式的平等観に立っていた。 ところが、機会の平等の保障を主眼とする形式的平等観のもとで生み出された結果の不平等が、無視しえない政治的問題や社会的問題にまで及ぶと、結果の不平等を各人の自己責任に帰せしめる不合理性が次第に認識されるようになり、実際上存在する社会的・経済的不平等の是正への取り組みが国家に対して求められるようになった。そこで憲法の平等の観念も、国家による不平等取扱いの禁止という消極的な内容のものから国家による平等の実現という積極的な内容をもつものへと変化した。 ただし、「自由」の理念との関係において結果の不平等を完全に解消することは両立し得ないとも考えられ両者の関係が問題となる。「自由」の理念は「個性と能力に応じた人格の展開を内実とし、努力に対する正当な評価を求めるもの」とされるからである。したがって、実質的平等といっても徹底した結果の平等ではなく、形骸化した機会の平等を実質的に確保するための基盤形成という意味にとどまるものと解されている。
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