強い力の振る舞い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/03 20:33 UTC 版)
「強い」という言葉が使われているのは、強い相互作用が4つの基本的な力の中で「最も強い」からである。1 フェムトメートル(1 fm = 10−15 メートル)以下の距離では、その強さは電磁気力の約137倍、弱い力の約106 倍、重力の約1038 倍にもなる。 強い力は素粒子物理学の標準模型の一部である量子色力学(QCD)により記述される。数学的にはQCDは、SU(3)と呼ばれる局所(ゲージ)対称変換群(英語版)に基づく非アーベルなゲージ理論である。 強い相互作用のフォースキャリアは、質量の無いボソンであるグルーオンである。電磁気学の光子が中性であるのとは異なり、グルーオンは色荷を持っている。クォークとグルーオンは、ゼロにならない色荷を持つ唯一の基本粒子であり、強い相互作用に関わるのは互いにのみである。強い力は、他のクォークやグルーオン粒子とグルーオンの相互作用を表現したものである。 QCDのクォークとグルーオンはすべて強い力を介して相互作用する。この相互作用の強さは強い結合定数によりパラメータ化される。この強さは粒子のゲージ色荷(群論的特性)により変化する。 強い力はクォーク間に作用する。他のすべての力(電磁気力、弱い力、重力)とは異なり、強い力はクォークのペア間の距離が長くなっても弱くならない。極限の距離(およそハドロンの大きさくらい)に達した後は、クォーク間の距離がいくら離れても、約10,000 ニュートン(N)のままである。クォーク間の分離が大きくなると、分離したクォークを作り出すのは不可能であることから、ペアに加わるエネルギーが元の2つのクォークの間に一致する新たなペアを作る。10,000ニュートンの力に対して行われる仕事の量は、この相互作用の非常に短い距離内で粒子と反粒子のペアを造るのに十分であるという説明がなされる。2つのクォークを引き離すのに必要な系に加えられたエネルギーは、元のクォークとペアになる新たなクォークを生み出す。QCDでは、この現象はカラー閉じ込めと呼ばれる。この結果として1つ1つの自由クォークではなく、ハドロンのみが観測される。自由クォークを捜索した実験がすべて失敗したことが、この現象の証拠と考えられている。 高エネルギー衝突に関わる基本的なクォークとグルーオンは直接観測できない。この相互作用により、新たに生成されるハドロンのジェットが作られ、これは観測することができる。1つの陽子のクォークが粒子加速器実験の間にもう1つの陽子の非常に速いクォークにより衝突されたとき、クォーク・クォーク結合に十分なエネルギーが蓄積されたときに、十分な質量とエネルギーの等価性の現れとして、これらのハドロンが生成される。しかし、クォークグルーオンプラズマは観測されている。
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