市庁舎での歓迎式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 17:40 UTC 版)
大公フランツ・フェルディナントを乗せた車はサラエボ市庁舎(英語版)に到着し、大公は市庁舎内で予定されていた歓迎式に参加したが、彼は直前に遭遇した出来事によるストレスを隠せない様子だった。大公はフェヒム・クルチッチ市長による歓迎のスピーチを途中でさえぎると、「市長殿、私はここに来るやいなや爆弾で出迎えられたぞ。一体どうなっているんだ」と言って抗議した。その後、妻ゾフィーは大公の耳に何かささやいた。そしてしばらくして、大公は市長に「もう良い、話を続けなさい」と告げた。この時までに大公は落ち着きを取り戻しており、市長は無事にスピーチを終えた。続いて大公がスピーチを行う番となったが、彼のスピーチ原稿は爆弾で走行不能となった車両に積まれていたため、原稿が市庁舎に届けられるまでに時間がかかり、ようやく届いた原稿は負傷者の血で濡れていた。大公は用意された原稿に、当日の出来事についての発言をいくつか付け加え、サラエボの人々の歓迎には「暗殺の試みが失敗したことへの歓喜が表れている」として感謝の意を述べた。 大公夫妻に同行していた者たちは、次に何をすべきかについて議論した。大公の侍従であるルメルスキルヒ男爵は、兵士らが市内に到着して警備の体制を整えるまで、大公夫妻は市庁舎を離れるべきではないと提案した。オスカル・ポティオレク総督は、演習から直接やって来る兵士はそのような任務にふさわしい礼装を着ていないとして、この提案を拒絶した。 ポティオレクは、「サラエボは暗殺者だらけとでもお思いですか?」と言って議論を終わらせた。 フランツ・フェルディナントとゾフィーは予定していた計画を諦め、先ほどの暗殺未遂による負傷者を見舞うためサラエボ病院を訪問することを決めた。午前10時45分、大公夫妻は市庁舎を出て車列に戻り、再び3台目の車に乗り込んだ。夫妻の安全を確保するため、ポティオレク総督は一行の予定されていた走行ルートを変更し、混雑した街の中心部を避け、病院までアペル・キーをまっすぐ進ませることに決めていた。しかし、ポティオレクは各車両の運転手に走行ルートの変更について伝達することに失敗した。歴史家ヨアヒム・レマク(英語版)によれば、この混乱はポティオレクの補佐官メリッツィが先の暗殺未遂の負傷者に含まれており、入院中であったために引き起こされた。
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