岸田劉生の自由臨画法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 08:28 UTC 版)
山本鼎の自由画教育論に強く反対したのが、画家の岸田劉生だった。岸田は旧来の臨画教育を「児童の心に何らかの愉悦を起こさせる要素を持たず」と「つまらない教科書だ」として批判した。しかし山本の自由画論を「個性を過大に考える傾向がある」として「他とはっきり異なって立っている」だけで「そういう作品こそ良い作品なのだ」とする「近代の流行語としての〈個性〉」には反対した。 岸田は「図画教育は美術家養成教育ではない」「個性が第一目標ではなく、美や善、美的薫育が一番重要である」と主張した。岸田は子ども達に美を理解させる方法として「優れた美術作品を鑑賞させること」が必要であり、それをさらに進めるために「自由臨画法」を提唱した。自由臨画とは、「古大家の描いた優れた美術品のすぐれた筆跡をたどるということ」で「手本の通りに形式的に模写させるのではない」「子どもに自発的にその画を好きになるようにさせ、模写させるように指導する」教育方法である。 岸田は「美術上における模倣は一面、独創への第一歩である」と述べ、「近代の人はともすると模倣というものは悪い、何でも独創が尊いとという風に考えるようであるが、これは深く、美術上の経験を知らず、また反省してみないからのことである」「美術を知らずして、本当に良き美術は生まれず、本当に深い美を得ることはできない」とのべて、模倣への批判に答えた。 岸田は自分の娘の麗子に自身の美術教育法で教えた。その12年間の結果を「我子への図画教育」で出版しているが、麗子の描いた絵は多様な絵の傾向の影響を受けながら、それでもなおかつ麗子らしさを持った絵となっている。岸田は「いわゆる模倣であったとしても、これほどに子どもが美を生むことができるならば、それでたくさんではないか」と述べている。
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