尊属加重規定の沿革
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 00:11 UTC 版)
かつて日本では、1908年制定の明治刑法により、自己または配偶者の直系尊属を殺した者について、通常の殺人罪(刑法第199条)とは別に尊属殺人罪(刑法第200条)を設けていた。通常の殺人罪では3年以上 - 無期の懲役、または死刑とされているのに対し、尊属殺人罪は無期懲役または死刑のみと、刑罰の下限が高く、より重いものになっていた。 日本の尊属殺重罰規定については、フランス刑法に由来するという説と、中国の律令からの伝統にならって儒教的道徳観に基づいて制定されたとする説とがある。 なお刑法では尊属殺人罪のほかに尊属傷害致死罪(刑法第205条2項)・尊属遺棄罪(刑法第218条2項)・尊属逮捕監禁罪(刑法第220条2項)という特別の条文を置いて通常の殺人罪・傷害致死罪(刑法第205条)・遺棄罪(刑法第218条)・逮捕監禁罪(刑法第220条)よりも刑を加重していた(尊属加重規定)。 1963年(昭和38年)に、法制審議会刑事法特別部会が決定した「改正刑法草案」では、一般殺人罪の規定のみが置かれ、尊属加重規定は定められなかった。 この明治刑法は、大日本帝国憲法から日本国憲法に変わった後も効力を保っていたが、1973年(昭和48年)4月4日に、最高裁判所で石田和外(大法廷裁判長)により、こうした過度の加重規定は、日本国憲法下では違憲であると違憲判決の確定判決が下され(尊属殺重罰規定違憲判決)、それ以降は適用されなくなり、1995年(平成7年)の改正刑法で正式に削除された。
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