尊属殺に関する法制度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/22 00:11 UTC 版)
近親殺のうち尊属が客体となる場合を尊属殺、卑属が客体となる場合を卑属殺というが、親子間の殺人事件の処罰のあり方については、その時代における様々な社会的諸条件のもとに定められてきた。 尊属殺を法律上特に重く罰することは、ローマ法のパリキディウム (parricidium) 以来、多くの国家で認められていた。古代ギリシャや古代ユダヤの法には、尊属殺の未遂に対する重罰規定が設けられていたが、既遂に関する規定はなく、このような蛮行がありうることを認めるのを嫌ったためとされている。尊属殺と卑属殺を区別せず近親殺という構成要件で重く処罰する立法例もみられる。 ただ、尊属殺重罰規定については法の下の平等の観点で議論があり、具体的事案に即した場合にも、親子間の葛藤の中で生じた殺人事件には、他人間の場合とは比較にならない「特別の情状」が存在することも多いとされている。このように情状において同情すべき場合に、一律に加重類型として取り扱うより、通常の殺人罪の規定のもとで具体的事案に即して、刑の軽重を判断するほうが妥当であると考えられるようになった。各国においても尊属殺人罪を規定する刑法は、大韓民国(刑法250条)や中華民国(刑法272条)、フランス(刑法299条)など、わずかな例をみるだけである。
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