射影空間への写像
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/05/15 13:38 UTC 版)
空間 X とその上の直線束 L を考える。L の大域切断 (global section) とは写像 s: X → L で自然な射影 p: L → X に対して ps = idX を満たすものを言う。X の十分小さな近傍 U で L がそこで自明となるようなものの中で考えれば、直線束の全空間は U と係数体 k との積空間であり、切断 s は写像 U → k に制限したものとなるが、s の値はこの自明化の選び方に依存し、かつ至る所消えていない函数を掛ける違いを除いてしか決まらない。 大域切断は、以下のようにして射影空間への写像を決定する。まず r + 1 個の L の繊維の点を少なくとも一つが 0 でないように選ぶことで Pr 上の自然線束の繊維が決まるから、r + 1 個の同時には消えない L の大域切断を選ぶことで X から射影空間 Pr への写像が決定する。この写像は L の各繊維を、自然線束の双対の繊維へ写す。より具体的に述べれば、s0, …, sr が L の大域切断とするとき、X の十分小さな近傍 U でそれらの切断が、自明化の選び方に依存する値を持つ U 上の k-値函数を決定するが、それらは非零函数を「同時に」掛ける違いを除いて決定されるから、それらの比はうまく定義される。つまり、一点 x 上での値 s0(x), …, sr(x) は自明化の依存して非零定数 λ を掛ける違いが生じてうまく定義されないが、これらには「同じ」定数 λ が掛かるから、斉次座標(英語版) [s0(x) : … : sr(x)] は定義可能で、同様に切断 s0, …, sr は x において同時には消えない。従って、全てが同時に消えない切断たちに対して、それらは [s0 : … : sr] の形で決定されて、X から Pr への写像となり、なおかつこの写像による自然線束の双対の引き戻しは L に一致する。この方法によって、射影空間は普遍性を獲得する。 射影空間への写像を決定するための普遍的方法は L の大域切断全体の成すベクトル空間の射影化への写像を決定することである。位相的な場合には、任意の点で消えない切断が存在するが、それは各点の小さな近傍の外側で消えるような隆起函数を使って容易に作ることができる。これにより、得られた写像は全ての点において定義されるが、終域はふつうは非常に巨大なものとなり不便である。代数的あるいは正則な場合には、これと反対のことが起きる。この場合の大域切断の空間はしばしば有限次元となるが、与えられた点において消えていない大域切断が取れるとは限らない(これはレフシェッツ束(英語版)を構成するときと同様)。実は、束が大域切断を一つも持たないことも可能であり、自然線束の場合はそうなる。線束が十分豊富であるとき、この構成は小平埋め込み定理を保証する。
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