直線束
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/06 05:14 UTC 版)
数学における直線束(ちょくせんそく、英: line bundle; 線束)は、空間の点から点へ動いていく直線の概念を表すものである。例えば、平面上の曲線は各点において接線を持つが、これらを束ねることによって接束が得られる。より厳密に、代数幾何学および微分位相幾何学における直線束は階数 1 のベクトル束として定義される[1]。
直線束は空間の各点の上にファイバーと呼ばれる1次元のベクトル空間を連続的に指定することで与えられる。トポロジーの文脈においては、実または複素ベクトル空間を考えることが多い。実と複素ではベクトル空間の位相的性質が異なるため、どちらを考えるかによって直線束は根本的に異なる振る舞いをする。1次元のベクトル空間から原点を取り除くと1×1 正則行列全体のなす空間が得られるが、1×1 正則実行列全体の成す空間は(正および負の実数をそれぞれ一点に縮めた)離散二点空間にホモトピー同値である一方、1×1 正則複素行列の空間のホモトピー型は円周である。
従って、実直線束はホモトピー論的には、二点集合をファイバーに持つファイバー束つまり底空間の二重被覆とほとんど同じようなものである。その特別な場合が可微分多様体上の向き付け可能二重被覆で、対応する直線束は接束の行列式束である。メビウスの帯は円周の二重被覆(偏角を θ ↦ 2θ にする写像)に対応し、ファイバーとして二点集合、単位区間、実数直線のどれを持つものと思っても本質的に同じである。
複素直線束は、円束と密接に関連している。よく知られたものとして、例えば球面から球面へのホップ・ファイブレーションがある。
代数幾何学においては、可逆層(つまりランク1の局所自由層)のことを直線束と呼ぶことがある。(ここで述べる意味での直線束と、ある意味で同値な概念である。)
射影空間上の自然束
代数幾何学において最も重要な直線束の一つは射影空間上の自然直線束である。体 k 上のベクトル空間 V の射影化 P(V) は V ∖ {0} を乗法群 k× による作用で割った商位相空間である。従って、P(V) の各点は k× のコピーに対応し、それら k× のコピーが合わさって P(V) 上の k×-束を成す。k× は k と一点の違いしかないから、各繊維にその点を添加して、P(V) 上の束にすることができる。この直線束を自然な直線束 (tautological line bundle) と呼ぶ。またこの直線束を
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