密会の手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 16:42 UTC 版)
フェルトとウッドワードは、どちらかが緊急に会う必要が生じた時に2人だけが分かる意思表示の方法も決められていた。これはウォーターゲート事件が大きく取り上げられて、FBIのNo.2と新聞記者が会うことが絶対秘密裏でなければならないための自衛措置でもあった。ウッドワードが会いたいと意思表示する時は自宅アパートのベランダに置いてある植木鉢を奥に引っ込めることが合図で、これをどうやってフェルトが見張って確認したのか当時は分からず、後にフェルトに聞こうとしたがその時にはもう認知症でついに謎のままとなった。フェルトが意思表示をする時はウッドワード宅に配達される『ニューヨーク・タイムズ』の20ページ欄のページ番号20に〇を書き入れて、その下に矢印をつけてその矢印の方向で何時にと分かるようにしていた(午前2時が多かった)のが合図であった。ウッドワードが勤める『ワシントン・ポスト』でなかったのは、当時『ワシントン・ポスト』が直接部屋の外までの配達だったのに対し、『ニューヨーク・タイムズ』は1階ロビーに部屋番号(617号室)をマーカーで付けて配達されていたことによる。 2人が会った場所はポトマック川沿いのバージニア州ロズリンにある地下駐車場の一番下の階で、アーリントン国立墓地の北側であり、近くにペンタゴンやオフィスビルが林立する市街地であった。フェルトはウッドワードに、自分に会う時はアパートのエレベーターを使わず非常階段を使って下り、自分の車を使わずにタクシーを使い、しかも途中で降りてしばらく歩いてまたタクシーに乗り、目的地の地下駐車場に直接行かず必ず数ブロック前で降りて歩いてくること、あとをつけられていると感じたら駐車場に入るなという細かい指示まで行っていた。 このようにしても実際はどちらかの急な都合で会えなかったこともあった。1972年10月10日にワシントン・ポスト紙がスクープ記事を出した後の10月19日、深夜に会うためにウッドワードはベランダの奥に植木鉢を移動して地下駐車場で1時間以上待ったがフェルトが現れず、うす暗く恐ろしい雰囲気にすっかり怯えながら必死で帰宅の途についた。実はこの日の午後にホワイトハウス執務室でハリー・ロビンス・ハルデマン補佐官がニクソン大統領に「FBIから情報が洩れていることが分かりました。私の秘密の情報源からの情報ではマーク・フェルトです。しかしこのことを公にすると私の情報源までばれてしまいますので明らかにできません。またミッチエル(前司法長官)が何もしない方がいいと言っています。明らかにすると知っていることを全て曝け出すでしょう。それはまずいことです」と報告していた。この会話は録音テープで記録されていたことがのちに明らかとなった。
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