定量的な分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/19 16:33 UTC 版)
以上の原理から、試料溶液中の対象となる物質の濃度を定量的に測定するには、まずその物質を何らかの形で発色する物質へと変換し(測定したい物質と変換後の色素の濃度が比例すれば、その色素の濃度を測定することで、間接的に目的の物質の濃度が分かる)、あらかじめ対象となる物質の吸収する波長のピーク付近の光のみを測定に用いてやる必要がある(例えば、白色光を用いて赤色の溶液を測定しても、その際通過する光のうち、青緑色の光以外は色素に全く吸収されずに通過してしまうから、光の強度と溶液中の赤い色素の濃度は純粋には比例しない)。同様に、その光が対象となる物質以外の物質に吸収されないようにする必要がある。 また、実験に用いるセル自体の光の反射や、光が溶液中で透過せずに散乱してしまうことなどにより、どうしても誤差が生じてしまう。実際の測定においては、このような影響は無視できないから、対象となる物質が含まれない溶液も同様に測定して、これを吸光度0として(I0をこの時の透過光の強さとして)比較する(対照実験)。あとはランベルト・ベールの法則による式を用いてそれを試料溶液と比較し、定量的に濃度を導き出すことができる。 しかし、実際には誤差の影響をできる限り減らすために、あらかじめ濃度既知の溶液を測定しておいて、吸光度と溶液の濃度の関係をプロットしたグラフ(これを検量線という)を作成しておき、これに試料の結果を当てはめる。さらに、上述のランベルト・ベールの法則は一般に希薄溶液でしか成り立たず、濃度が高くなるに従い、検量線はその定式から本来想定される直線ではなくなる。しかし、ランベルト・ベールの法則が成り立たずとも、濃度が高くなるにつれて吸光度が高くなるという関係が崩れず、ある濃度に対してある吸光度が定まるならば、そこには一対一対応の関係があるから、やはり吸光度から濃度を測定することができる。この濃度を定量的に知るためには、同様に既知の濃度の溶液を測定して濃度と吸光度の関係をグラフにしておき、それと濃度未知の試料の吸光度を比較してやればよい。
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