学界の議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 00:01 UTC 版)
学界の通説は、国家が宗教団体に政治上の権力を行使させてはならない、ということは、宗教団体を政治参加させてはならないという意味ではないとする。すなわち「政治上の権力」とは、国が独占すべき「統治権力(立法権、課税権、裁判権等)」のことを指す とするものである。 この説に対して、佐藤功は、宗教団体の政治参加を制限する立場から、国の統治的権力を宗教団体が行使するということは現代では考えられないので「政治上の権力」とは「政治上の権威とでもいうべき観念」であり、「政教分離の原則を明らかにするために宗教団体が政治的権威の機能を営んではならない」とする説を主張している。 この説には、世界の政教分離の態様は様々であり、例えばドイツには現に教会に租税徴収権が認められていることを留意すべきという反論、「政治的権威の機能」の意味が明確を欠き、疑問が残るという批判がある。 田上積治は、「政治上の権力」を「積極的な政治活動によって政治に強い影響を与えること」ととらえ、その理由として「宗教団体の政治活動は他の政治団体と容易に妥協しない性格を持つから民主政治にそぐわない(趣意)」という説を主張している。一方、芦部信喜や橋本公亘は、宗教団体の政治活動の自由を制限したり禁止したりするのは宗教を理由に差別することになる、と主張している。 宗教団体・宗教団体構成員の政治活動・政党結成を制限することは、以下の複数の規定に抵触することになる。 信条による差別全般を禁止した憲法第14条1項 公務員の選定を「国民固有の権利」(=全ての国民に保障された権利)とした憲法第15条1項 思想・良心の自由を保障した憲法第19条 結社・言論の自由を保障した憲法第21条1項 国政選挙における信条による差別を禁止した憲法第44条 地方選挙権を「住民」に保障した憲法第93条2項 憲法第20条1項を厳しく解釈した結果それ以外の複数の条項に違反するのは明らかに不合理であるというのが通説的見解の根拠である。
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