威力業務妨害罪の構成要件に該当しないとの主張について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 17:32 UTC 版)
「沖縄国体日の丸焼却事件」の記事における「威力業務妨害罪の構成要件に該当しないとの主張について」の解説
原判決は、被告人の本件行為について威力業務妨害罪が成立すると認定判断したが、本件行為は、本件競技会の業務に携わる者の一部がこれに主観的に対応したにすぎず、客観的にはそれらの者に何らかの対応を迫るものではなく、これによって会場に混乱が生じたこともないし、競技を開始しようと思えばいつでもできたものであり、本件競技会の開始が一五分ほど遅れたのは、日の丸旗の再掲揚を要求した弘瀬会長の言動によるものであって、本件行為とは相当因果関係がないから、「人の意思を制圧するような勢力」により業務妨害の具体的危険性が生じたとはいえず、また、被告人には本件競技会を妨害する意図は全くなく、本件行為を自己の表現行為と考えていて「威力」に当たるとの認識を欠いていたから、威力業務妨害の故意もなく、したがって、本件行為につき威力業務妨害罪は成立しないというべきであるから、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるというのである。 そこで、検討するのに、威力業務妨害罪の「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力をいい、同罪の成立には、その威力の行使によって現実に業務妨害の結果が発生したことは必要ではなく、その結果を発生させるおそれのある行為をすれば足りると解される。……(略)……認定事実によると、被告人の本件行為は、日の丸旗の焼却に伴い直後の再掲揚を不可能ならしめるのみならず、大勢の観客が見守る中、多数の関係者により整然と行われていた本件競技会の開始式の運営上、極めて異常な事態として、その運営に携わる関係者らに対し、できる限り本件行為による影響をなくし、従前どおり開始式及びそれに続く競技会を整然と進行させるための対応ないし努力を余儀なくさせるものであり、現実にも右関係者による日の丸旗の再掲揚、会場を鎮静化するための挨拶等が行われ、競技会の開始が約一五分遅れるなどしたのであるから、本件行為をもって、本件競技会の運営に携わる者の意思を制圧する勢力の行使があったというに十分であり、かつ、それによる業務妨害のおそれも生じていたことが明らかである。開始式が本件行為後も予定どおり続行されたことは、むしろ開始式及び競技会への影響をできる限り少なくしようとした主催者及び主管者側の対応ないし努力によるものと考えられ、本件行為による影響がなかったことを示すものではない。……(略)……以上のとおり、被告人の本件行為は威力業務妨害罪の構成要件に該当するから、論旨は理由がない。
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