威力業務妨害罪の成否について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 17:32 UTC 版)
「沖縄国体日の丸焼却事件」の記事における「威力業務妨害罪の成否について」の解説
弁護人は、「威力業務妨害罪について、被告人の行為は人の意思を制圧するようなものとはいえないから威力に該当しない。また、被告人の行為によって業務妨害が現実に引き起こされたことはなく、その具体的危険も発生しなかったのであるから、被告人の行為は業務妨害にも当たらない。さらに被告人には、国体そのものを妨害する意図がなかったから、故意がなかった。」旨主張する。 まず、被告人の行為が威力に当たるか否かについて検討するに、「威力」とは、人の意思を制圧するような勢力をいうところ、被告人が本件スコアボード屋上でセンターポールに取り付けられたロープをカッターナイフで切断した上、そのポールに国旗として掲揚されている日の丸旗一枚を引き降ろし、これにライターで火をつけ、これを球場内にいる人々に掲げて見せるなどし、その半分程を焼失させたことは前記認定のとおりであるが、被告人の右行為は、本件競技会に携わる者に異常な事態としてその対応を迫るものであり、また、その場で日の丸旗を直ちに再掲揚することを物理的に不可能にするものでもあって、これが本件競技会に携わる者の意思を制圧するに足りる勢力であることは明らかである。次に、……(略)……威力業務妨害罪が成立するには、現実に業務妨害の結果が発生したことを要せず、その結果を発生させるおそれのある行為をすれば足りるところ、本件妨害行為は、本件競技会に携わる者に異常な事態としてその対応を迫り、それぞれの役割分担により現実に行っている業務やそのような事態が起こらなければ行ったであろう業務に支障をきたすおそれのあるものであるから、業務妨害の結果が発生したかどうかにかかわらず、威力業務妨害罪が成立することは明らかである。……(略)……したがって、威力業務妨害罪の構成要件には該当しないとの主張は理由がない。
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