姶良火砕噴火
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/25 09:59 UTC 版)
長岡ら(2001)によれば約2.9万年前、Smith et al.(2013)によれば約3万年前、大噴火が発生した。一連の噴火は総称して姶良火砕噴火と呼ばれる。 はじめに、現在の桜島付近で大規模なプリニー式噴火が発生し、軽石(大隅降下軽石)や火山灰が風下の大隅半島付近に降り積もった。この噴火では噴煙柱が複数回にわたって部分的に崩壊し、火砕流(垂水火砕流)が発生した。このプリニー式噴火に引き続いて現在の若尊付近を噴出源として妻屋火砕流が発生した。この火砕流堆積物と大隅降下軽石堆積物の上部と指交関係にあり、この二つの堆積物は時間間隙を置かない連続的な噴火と考えられる。妻屋火砕流は火山豆石を多量に含み、また堆積物は全て非溶結であることから、マグマ水蒸気噴火によって生じたと考えられる。 垂水火砕流堆積物や妻屋火砕流堆積物の上面にしばしば見られる軽微な侵食構造が見られる。これについては、入戸火砕流の噴出までにわずかな時間間隙(数ヶ月以内)があったとの説と、この侵食は入戸火砕流による侵食であり時間間隙は示さないとする説がある。 最後にカルデラ北東部の若尊付近から大量の流紋岩質マグマが火砕流(軽石流)として一度に噴出した。素材となったマグマは温度が770-780℃、圧力が1600-1900気圧であったと推定されている。この火砕流は入戸火砕流と呼ばれ、地表を走り九州南部に広がった。この火砕流堆積物は最大層厚は180mに及び、シラス台地を形成した。火砕流から巻き上げられた火砕物 (co-ignimbrite ash)は姶良Tn火山灰と呼ばれ、偏西風に流されて北東へ広がり、日本列島各地に降り積もった。関東地方で10cmの厚さの降灰があったとされる。現在の霧島市牧之原付近を中心とした地域の入戸火砕流堆積物最下部には、亀割坂角礫と呼ばれる岩塊が堆積しており、最大層厚は30m、中には直径2mの巨礫も含まれている。これは、噴火と同時にカルデラの陥没によって基盤岩が粉砕されて空中に放出され周辺に落下したものと考えられる。 噴出物の総量は見かけ体積で、大隅降下軽石が98km3・垂水火砕流が1-20km3・妻屋火砕流が13.3km3、入戸火砕流が500-600km3・姶良丹沢テフラが300km3推定されており、火山爆発指数は7から8となる。
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