太陽熱発電と太陽光発電の違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 01:29 UTC 版)
「太陽熱発電」の記事における「太陽熱発電と太陽光発電の違い」の解説
太陽電池で発電を行う太陽光発電とは異なり、太陽熱発電は太陽光をレンズや反射鏡を用いた太陽炉で集光することで、汽力発電の熱源として利用する発電方法である。太陽光がエネルギー源のため、太陽が寿命を迎えるまでの間、すなわち、今後数十億年に亘って資源の枯渇の恐れがない発電方法である。燃料を用いないため、燃料の燃焼に伴う窒素酸化物や硫黄酸化物や二酸化炭素などの発生が無く、燃料費や燃料輸送費や燃料を安全に管理するための費用などが不要であるため運転にかかる費用を低く抑えられ、燃料費高騰によるコスト上昇のリスクもない。そして、高コストな太陽電池を使う太陽光発電に比べて、太陽熱発電で使用する反射鏡の方が製造・保守の面で有利とされる。 また、常に光が当たっていないと発電できない太陽光発電とは異なり、大規模化すると蓄熱により発電量の変動を抑えることが可能であり、夜間でも稼働できる上に、例えばソーラーポンドのように発電以外に、熱自体を利用することも可能である。さらに、太陽電池とは異なり、太陽熱発電は熱源として太陽光を用いているだけなので、ボイラーを併設して火力発電との設備の共用が可能であり、実際に、例えばアルバラド太陽熱発電所やソルノバ太陽熱発電所などのように太陽熱を主な熱源として用いる一方で、出力安定化などのために補助の熱源として燃料を燃焼させる方式をとっている太陽熱発電所も散見される。 それから、太陽電池では直接発生させられる電圧が限られる上に、直流の電流が発生する。太陽電池で発生させた電力をその場で用いるのであれば大きな問題は無いものの、低電圧の直流のままでは長距離の送電に向かないため、送電を行う場合は、直流を交流に変換して、さらに変圧して電圧を上げる必要があり、この変換には当然ながらエネルギーの損失を伴う。これに対して、太陽熱発電は熱源として太陽光のエネルギーを用いているだけなので、従来の汽力発電で用いられてきた大型かつ高電圧の交流発電機が使用可能なので、従来型の大規模な送電網に乗せることにも都合が良いといった利点もある。なお、太陽熱発電は大規模化すると蓄熱して出力を安定化させやすいなど、スケールメリットが効くため、施設を大規模にするのが好ましいわけだが、このスケールメリットを活かすためにも、従来の大規模な送電網は有用である。 ただし、太陽熱発電には欠点もある。太陽電池を用いた発電であれば、日の出後すぐに発電が開始されるのに対して、太陽熱発電では日の出後すぐに出力を上げることは難しい。これは冬期間の昼間が短い、さらには、極夜すらある地球の高緯度地域には致命的な問題で、地球の高緯度地域は太陽熱発電に向かない。また、太陽熱発電の場合は、蓄熱すれば太陽電池とは違って夜間でも稼働できるとは言え、放熱によるエネルギーの損失は避けられない。さらに、昼間に曇天や雨天であると、太陽光が弱くなるなどの理由で、出力が上がりにくくなる。そのため、低緯度から中緯度にかけて、かつ、乾燥地域や山に囲まれた内陸部などの晴天率の高い地域での太陽熱発電所建設が有効である。
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