多折法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/09 14:27 UTC 版)
『伏波神祠詩巻』のたとえば「一以功名累」の「一」の字は、幾重にも震えたように波打っている。この用筆を多折法といい、後の時代の行書のモデルとなった。 一つの点画を「トン(起筆)・スー(送筆)・トン(収筆)」の3つの要素からなるリズムで書く書法を三折法という。この三折法は初唐時代に楷書体が成立することによって生まれたリズム法である。黄庭堅はこの三折法をさらに細分化し、起筆は、起筆の起筆、起筆の送筆、起筆の収筆に三分割され、送筆も収筆も同様に三分割され、合計9単位に分割された字画が、さらに上位の起筆・送筆・収筆の三単位に連合されている。黄庭堅は戎州時代に船頭が舟を漕ぐときの櫓の動きを見てこの多折法の書き方を思いついたという。 石川九楊は『書とはどういう芸術か』の中で、「書は構造的に彫刻と容易に置換しうる深さの芸術、いわば彫刻である。」と述べている。そして、「肉筆の中に、その深さの理解されやすい例を求めれば、真っ先に、黄庭堅の『伏波神祠詩巻』が思い出される。」とし、その具体例として上述の「一」の字を示して多折法の解説をしている。続いて、「目をつむって、力まかせに打ち込むというような無謀さはない、慎重に静かに打ち込み、対象からの手応えを感じ、その対象からのはねかえりに合わせながら、ていねいに掘り進んでいく。そこから泥土のような世界が立ち上がってくる。それが『伏波神祠詩巻』の世界なのだ。(抜粋)」と評している。
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