外部費用の内部化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/01 19:45 UTC 版)
日本を含む多くの地域では、限られた資源を有効に配分する手法として市場経済が採用されているが、その市場原理においては、生産に要する限界費用と、それを消費者が購入する際に支払う価格が一致したときに、資源の効率的配分が実現する(パレート最適)。 この理論が成り立つのは当該生産活動にかかる全ての便益および費用が市場を経由していることが前提となるが、現実にはそうなっていない場合があり、それが公害などの環境問題を悪化させる原因になっている場合がある。 たとえば、ある製品を A地点から B地点まで定期的に輸送するとき、貨物列車と自動車を使う選択肢があると仮定する。列車では軌道や車両の敷設・購入・維持管理から走行にかかるエネルギー・駅設備や乗務員の雇用・教育などにかかる費用をすべてを利用者が運賃として負担することになるが、自動車の場合は車両の維持管理や運転手の雇用・エネルギーにかかる費用は利用者が負担するものの、道路や信号機等の維持管理にかかる費用および大気汚染を発生させる費用の負担を求めない(このように受益者が負担を免れる費用を外部費用という)場合に、これらの間で単純に価格競争が実施されれば自動車の方が費用負担が過少になることから、市場原理の下では後者の利用(生産)が増大する。しかし、道路の維持管理にかかる費用や、大気汚染により健康を害した人の損失などは社会全体や第三者が負担しているので(これらを社会的費用という)、社会全体で見た場合には、列車利用が増加した場合に比べ効率が悪くなってしまうことになる。 このとき、自動車の利用者に対しては政策的にその外部費用の負担を求める(外部不経済の内部化)こととする。単位あたりの利用(生産)増大により増加する道路の維持管理や大気汚染といった外部費用(これを限界外部費用という)を明示的に自動車利用者の費用計算に含めたとき、市場原理に基づいて過大利用(生産)が抑制され、社会全体から見て最も効率の高い利用水準へと調整される。このように、外部費用を市場価格に反映させる手法を内部化と呼び、それを政府などが政策的に実施する手法を経済的手法と呼ぶ。
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