変域
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 01:21 UTC 版)
pHの下限や上限は、特には存在しない。鉛蓄電池の電解液のpHは負の値であり、アルカリ乾電池の電解液のpHは14を超える。ただし、酸や塩基のモル濃度が 1 mol/L を超える水溶液のpHは、推測することも計測することも難しい。このような濃厚水溶液の酸性やアルカリ性の強さは、酸度関数によって表現するのが一般的である。 モル濃度が数モル毎リットル (mol/L)以上の濃厚水溶液では、水素イオンのモル濃度 [H+] からpHを計算しても、意味のある数値は得られない。例えば、アメリカ地質調査所の研究者は、ある廃鉱山から採取した試料水のひとつが pH = −3.6 であったと報告している。この試料水の水素イオン濃度を 公式 [H+] = 10−pH mol/L からあえて計算すると、4000 mol/L というありえない値が得られる。このような強酸性の液体のpHを [H+] から推定するのは、不可能である。 日本の高等学校の教科書などでは、pHは [H+] の逆数の常用対数として定義されている。そして1気圧・25℃でのpHの値が0 - 14の範囲で図表が掲げられ、水溶液のpHはほぼその範囲で変化すると記述されている。 また水溶液のガラス電極によるpH測定において、信頼性の高い値が得られるのはpHがおよそ1 - 12の範囲内、イオン強度は0.1以下である。まず濃厚な酸の水溶液をガラス電極により測定する場合、ガラス電極表面の膨潤および陰イオンの吸着などが影響し、酸誤差が生じる。次に濃厚な塩基水溶液の場合はガラス電極表面への陽イオンの吸着などの影響によりアルカリ誤差を生じ、これは陽イオンのイオン半径が小さいほど大きい傾向がある。 市販されているpHメーターで測定ができるpH範囲は、通常は、0から14までか、それよりも狭い範囲に限られる。
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