変動の経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/18 14:36 UTC 版)
袋形動物 鰓曳動物、動吻動物、線形動物など■ 体腔動物 腕足動物など★ 後口動物 棘皮動物、脊索動物など 前口動物 軟体動物など★ 体節動物 環形動物★ 有爪動物■○ 汎節足動物 緩歩動物■○ 舌形動物■○* 節足動物■ 21世紀以降から否定的になった、汎節足動物の古典的な系統位置■:21世紀以降の脱皮動物の構成群★:21世紀以降の冠輪動物の構成群○:側節足動物とされてきた群*:21世紀以降では節足動物に内包される群 「節足動物#他の動物門との関係性」および「側節足動物」も参照 「汎節足動物」(Panarthropoda)という分類群が創設されたのは1990年代の出来事だが、「節足動物・有爪動物・緩歩動物の3群は単系統群を成す」という、汎節足動物に等しい系統仮説自体は19世紀後期まで遡れる。しかし、20世紀末までの古典的な動物学では、シタムシは独自の動物門「舌形動物」(Pentastomida)として節足動物から区別され、汎節足動物の動物群は環形動物に近縁と思われ、ともに体節制に基づいたはしご形神経系と付属肢を持つことから、まとめて単系統群の「体節動物」(Articulata)をなすという系統仮説が主流であった。その中で有爪動物と緩歩動物、時には舌形動物まで、環形動物と節足動物の中間形態をもつと思われ、両者の間、もしくはそのいずれか(主に節足動物)に至る系統の道筋から分岐するとされていた。これに踏まえて、有爪動物、緩歩動物と舌形動物を「側節足動物」(Pararthropoda)としてまとめる場合もあった。 しかし21世紀以降では、主に分子系統解析の進展により、環形動物は汎節足動物に類縁せず、むしろ軟体動物や腕足動物などと単系統群を成し、まとめて「冠輪動物」として区別されるようになった。体節動物説の根拠とされたきたいくつかの性質(体節制・原腎管の類似など)も、後に遺伝子発現や発生学的見解により環形動物と汎節足動物でお互いに別起源だと示された。同時に汎節足動物は、鰓曳動物や線形動物などと単系統群になると判明し、脱皮を行うという共通点に因んで「脱皮動物」としてまとめるようになった。一方で、舌形動物は精子の構造と分子系統解析の両面から、独立した動物門ではなく、系統的に節足動物に含まれ、とりわけ鰓尾類に近縁で極端に特化した甲殻類だと判明した。 汎節足動物に似た体節制をもつ、かつてはその近縁と考えられてきた環形動物。 鰓曳動物(エラヒキムシ)。汎節足動物と共に脱皮動物を成す動物門の1例。 節足動物のシタムシ(イヌシタムシ)の幼生。節足動物の性質が不明瞭で、かつては独立の動物門(舌形動物)扱いされた。 その結果、古典的な「体節動物」と「側節足動物」はいずれも系統関係を反映できない多系統群だと分かり、徐々に2000年代以降の分類体系に廃止されるようになった。それ以降の汎節足動物は、緩歩動物の不確かな分子系統学的位置で単系統性が疑問視されることもある(前述参照)が、多方面の見解の進展により、単系統群を成す説の方が広く認められている。古生物学で葉足動物を中心にして展開され、今まで体節動物説を踏まえてきた汎節足動物たちの初期系統仮説も、この変動により脱皮動物説の基準で再構築されるようになった(後述参照)。
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