塩ビ用安定剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/28 23:00 UTC 版)
ポリ塩化ビニルは、製造・加工時や使用時において熱や紫外線、酸素などにより塩化水素が脱離する分解反応が起き、長鎖ポリエンが生成し着色が起きる。脱離した塩化水素や、副生成物の塩化亜鉛は、さらに塩ビの分解を促進させる。塩化水素の捕捉・中和や、副生金属塩化物の脱塩化水素作用のため、各種金属石鹸や有機スズ化合物などが用いられる。 金属石鹸 ステアリン酸亜鉛・ステアリン酸バリウム・ステアリン酸カルシウムが代表的である。熱安定性や着色性、ブルームしやすさなど性質が異なるため、複数の種類を混合して使用される。 有機スズ化合物 有機スズメルカプタイドが代表的であり、耐候性が求められる場合には有機スズマレエートが使われる。これらに、滑剤としての性質を併せ持った有機スズカルボキシレートが併用される。 鉛化合物 鉛白や三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、ステアリン酸鉛なども塩化水素捕捉能を持つが、有毒であるためスズ系安定剤に切り替えられつつある。 安定化助剤 主安定剤に併用し、熱安定性・透明性・着色防止効果を持たせるため、ホスファイト類、エポキシ化合物、β-ジケトンなどの有機安定化助剤、および過塩素酸金属塩、ハイドロタルサイトなどの無機安定化助剤が使われる。ホスファイト類 置換基の構造により、トリアルキルホスファイト、アルキルアリルホスファイト、トリアリルホスファイトに分類される。過酸化物分解能があり、主に着色抑制目的で添加されるが、塩化亜鉛捕捉作用や不安定塩素置換作用も併せ持つ。 エポキシ化合物 エポキシ化大豆油やビスフェノールAジグリシジルエーテルなどが代表的である。塩化水素捕捉、アリル塩素置換により塩ビの熱安定性を向上させる。 β-ジケトン 強い着色防止作用を持ち、金属石鹸(主に亜鉛塩)と併用される。ジベンゾイルメタンやベンゾイルアセトンが代表的である。 過塩素酸金属塩 金属石鹸と併用して、着色防止・熱安定性を持たせる。作用機構は研究途上であるが、アリル塩素の置換によるものと見られている。過塩素酸バリウムや過塩素酸ナトリウムが代表的である。 ハイドロタルサイト 塩化水素捕捉作用で、主に熱安定性を向上させる。
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