ステアリン酸鉛とは? わかりやすく解説

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ステアリン酸鉛

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/11 14:24 UTC 版)

ステアリン酸鉛
識別情報
CAS登録番号 1072-35-1 
PubChem 61258
ChemSpider 55198
UNII HQ5TZ3NAEI
EC番号 214-005-2
特性
化学式 C36H70PbO4
モル質量 774.14
外観 白色の粉末
密度 1.4 g/cm3
融点

115.7 °C, 389 K, 240 °F

沸点

359.4 °C, 633 K, 679 °F

への溶解度 わずかに溶ける
危険性
GHSピクトグラム
GHSシグナルワード 危険(DANGER)
Hフレーズ H302, H332, H360, H373
Pフレーズ P260, P261, P281, P304, P340, P405, P501
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ステアリン酸鉛(ステアリンさんなまり、英語: lead stearate)とは、2価のと2分子のステアリン酸のカルボキシ基とが、を形成した化合物である。なお、オクタデカン酸鉛(オクタデカンさんなまり、英語: lead octadecanoate)などとも呼ぶ。

構造と物理化学的性質

しばしば鉛はカルボン酸と塩を形成する事で知られており、例えば、健康被害を引き起こした酢酸鉛が有名である[1]。それと同様に、鉛はステアリン酸とも塩を形成する。それがステアリン酸鉛である。その化学構造からステアリン酸鉛は、金属石鹸と呼ばれる物質のグループにも分類される[2]。もちろん、ステアリン酸鉛もまた有毒である[3]。ステアリン酸鉛は、常温常圧で白色の固体として存在する[4]。その常圧における融点は115.7 ℃で、沸点は359.4 ℃である。常温常圧におけるステアリン酸鉛の密度は約1.4 (g/cm3)であるため、水に沈む[4]。そして、水に少し溶解する[5]。一方で、加熱したエタノールには可溶である。なお、空気中で吸湿する性質を有する。

合成法

ステアリン酸鉛は、酢酸を触媒として、ステアリン酸と酸化鉛を反応させる方法で得られる[6]

2C
17
H
35
COOH + PbO → (C
17
H
35
COO)
2
Pb + H
2
O

他に、例えば酢酸鉛とステアリン酸ナトリウムを反応させても得られる。

Pb(CH
3
COO)
2
+ 2NaC
18
H
35
O
2
→ Pb(C
18
H
35
O
2
)
2
↓ + 2CH
3
COONa

利用

ステアリン酸鉛は石油関連工場において、その吸湿性を利用して乾燥剤として使用する場合が有る他に、石油製品の腐食抑制剤英語版としても用いられる場合が有る[7][8]。また、ポリ塩化ビニル製品の製造時に加熱された際などのための安定剤や、加工時の滑剤として、ステアリン酸鉛を用いる事で、製品を製造し易くするために添加される場合が有る[9]

危険性と健康被害

ステアリン酸鉛は有毒である。例えば日本では、塩化ビニルの安定剤としてステアリン酸鉛を使用していた塩化ビニル製品の製造工場の労働者が、ステアリン酸鉛の細粉を吸入した事などにより、ステアリン酸鉛に曝露されたため、鉛中毒を発症した事例が、1963年3月に報道された[3]

出典

  1. ^ 桜井 弘 『元素111の新知識』 p.337、p.338 講談社(ブルーバックスB1192) 1997年10月20日発行 ISBN 4-06-257192-7
  2. ^ T3DB: Lead stearate”. t3db.ca. 2023年3月7日閲覧。
  3. ^ a b 朝日新聞、1963年3月28日朝刊 7面
  4. ^ a b LEAD STEARATE | CAMEO Chemicals | NOAA”. cameochemicals.noaa.gov. 2023年3月7日閲覧。
  5. ^ Lead Stearate”. American Elements. 2023年3月7日閲覧。
  6. ^ Preparation process of lead stearate based on melting method” (英語) (2013年12月18日). 2023年3月7日閲覧。
  7. ^ Lead Stearate”. Waldies Co. Ltd.. Waldies Co. Ltd.. 2023年3月7日閲覧。
  8. ^ (英語) Encyclopedia of Chemical Technology: Fuel resources to heat stabilizers. Wiley. (1991). p. 1074. ISBN 978-0-471-52669-8. https://books.google.com/books?id=WPBTAAAAMAAJ&q=lead+stearate 2023年3月7日閲覧。 
  9. ^ Titow, M. V. (6 December 2012) (英語). PVC Technology. Springer Science & Business Media. p. 269. ISBN 978-94-009-5614-8. https://books.google.com/books?id=aYPtCAAAQBAJ&dq=lead+stearate&pg=PA269 2023年3月7日閲覧。 



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