四塩化鉛
塩化鉛(IV)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/12 06:20 UTC 版)
塩化鉛(IV) | |
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![]() |
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Lead(IV) chloride |
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Tetrachloroplumbane
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識別情報 | |
CAS登録番号 | 13463-30-4 |
PubChem | 123310 |
ChemSpider | 109913 |
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特性 | |
化学式 | PbCl4 |
モル質量 | 349.012 g/mol[1] |
外観 | 黄色の油状液体[2] |
密度 | 3.2 g⋅cm−3[1] |
融点 | |
沸点 | 50 °C, 323 K, 122 °F [1](分解) |
構造 | |
配位構造 | 4 |
分子の形 | 四面体形分子構造[3] |
熱化学 | |
標準生成熱 ΔfH |
−328.9 kJ/mol |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
塩化鉛(IV)(えんかなまり よん、英語: lead(IV) chloride)または、四塩化鉛(しえんかなまり、英語: lead tetrachloride)は、化学式が PbCl4 で表される無機化合物である。黄色の油状液体で、0℃以下で安定で50℃で分解する[2]。鉛を中心原子とする四面体形分子構造をとる。Pb-Clの共有結合は247 pm、結合エネルギーは243 kJ・mol−1と測定されている[4]。
合成
塩化鉛(IV)は、塩素ガスの存在下、塩化鉛(II)と塩酸を反応させることで合成することができ[5]、クロロ鉛酸 (H2PbCl6) が生成する。塩化アンモニウムを加えてアンモニウム塩 ((NH4)2PbCl6) に変換する。最後に、溶液を濃硫酸で処理し、塩化鉛(IV)を分離する。これらの反応は0℃で行われる。
-
PbCl
2 + 2HCl + Cl
2 → H
2PbCl
6 -
H
2PbCl
6 + 2 NH
4Cl → (NH
4)
2PbCl
6 + 2HCl -
(NH
4)
2PbCl
6 + H
2SO
4 → PbCl
4 + 2HCl + (NH
4)
2SO
4
水との反応
他の第14族元素(炭素族元素)の塩化物である四塩化炭素とは異なり、塩化鉛(IV)は水と反応する。これは中心原子が大きく(鉛は炭素より大きい)、立体障害が少なく水が容易にアクセスできるためである[3]。また、Pb原子には空のd軌道が存在するため、Pb-Cl結合が切れる前に酸素が結合することができ、エネルギーが少なくて済む。
-
PbCl
4 + 2H
2O → PbO
2
(s) + 4HCl
(g)
安定性
塩化鉛(IV)は、塩化鉛(II)と塩素ガスに分解する傾向がある[3]。
-
PbCl
4 → PbCl
2 + Cl
2
(g)
この反応は爆発的に進行する可能性があり、-80℃の純硫酸下で暗所に保管するのが最適であるという報告がある[6]。
酸化数 +4 の安定性はこの元素族の下に行くほど低下する[3]。したがって、四塩化炭素は安定な化合物であるが、鉛では +2 の酸化数が優先され、PbCl4はすみやかにPbCl2になる。実際、不活性電子対効果により +2 の酸化数を優先する。鉛原子は最外殻のp電子をすべて失い、安定して満たされたSサブシェルを持つことになる[7]。
毒性
鉛は蓄積毒である[4]。鉛の発癌性については限られた証拠しか示されていないが、「発がん性物質に関する報告書 第12版」(2011年)によると、塩化鉛(IV)は他のすべての鉛化合物と同様に「ヒトに対して発がん性があると合理的に予測される」とされている[8]。鉛は主に吸入であるが、経口摂取や皮膚接触など、複数の経路で体内に吸収される。鉛化合物は催奇形物質でもある[9]。
出典
- ^ a b c d “Lead compounds: Lead Tetrachloride”. WebElements.com. 2012年10月10日閲覧。
- ^ a b c グリーンウッド, ノーマン; アーンショウ, アラン (1997). Chemistry of the Elements (英語) (2nd ed.). バターワース=ハイネマン. p. 381. ISBN 978-0-08-037941-8。
- ^ a b c d “The Chlorides of Carbon, Silicon and Lead”. chemguide.co.uk. 2012年10月10日閲覧。
- ^ a b Emsley, John (2000). The Elements. Oxford: Oxford University Press. p. 114. ISBN 978-0-19-855819-4
- ^ Neu, John T.; Gwinn, William D. (October 1958). “Raman Spectra of Germanium Tetrachloride and Lead Tetrachloride”. Journal of the American Chemical Society 70 (10): 3464–3465. doi:10.1021/ja01190a073. PMID 18891892.
- ^ The Chemistry of Germanium: Tin and Lead E. G. Rochow, E. W. Abel Elsevier, 2014, ISBN 1483187586, ISBN 9781483187587
- ^ Miessler, Gary L. (2011). inorganic Chemistry. Boston: Prentice Hall. pp. 275, 289–290. ISBN 978-0-13-612866-3
- ^ National Toxicology Program, Department of Health and Human Services (2011). Report on Carcinogens, Twelfth Edition (2011) - Lead and Lead Compounds. p. 251
- ^ “Environmental Health & Safety - 1: General Information About Chemical Safety”. Princeton UNiversity. 2013年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年10月11日閲覧。
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