塩化スズ(II)とは? わかりやすく解説

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塩化スズ(II)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/09 13:30 UTC 版)

塩化スズ(II)
Tin(II) chloride
気相での球棒モデル
気相での空間充填モデル
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
DrugBank
ECHA InfoCard 100.028.971
EC番号
  • 231-868-0
E番号 E512 (pH調整剤、固化防止剤)
PubChem CID
RTECS number
  • XP8700000 (無水物)
    XP8850000 (二水和物)
UNII
国連/北米番号 3260
CompTox Dashboard (EPA)
性質
SnCl2
モル質量 189.60 g/mol (無水物)
225.63 g/mol (二水和物)
外観 白色の結晶性固体
匂い 無臭
密度 3.95 g/cm3 (無水物)
2.71 g/cm3 (二水和物)
融点 247°C (無水物)
37.7 °C (二水和物)
沸点 623 °C (1,153 °F; 896 K) 分解
83.9 g/100 ml (0 °C)
熱水中で加水分解
溶解度 エタノール、アセトン、エーテル、テトラヒドロフランに溶ける。キシレンに溶けない。
磁化率 −69.0·10−6 cm3/mol
構造
層構造
(SnCl3グループの鎖)
三角錐 (無水物)
二水和物は三配位
Bent (gas phase)
熱化学
標準生成熱 ΔfHo −325 kJ/mol
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性
刺激性、水生生物にとって有害
GHS表示:[2]
Danger
H290, H302+H332, H314, H317, H335, H373, H412
P260, P273, P280, P303+P361+P353, P304+P340+P312, P305+P351+P338+P310
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
Health 3: Short exposure could cause serious temporary or residual injury. E.g. chlorine gasFlammability 0: Will not burn. E.g. waterInstability 0: Normally stable, even under fire exposure conditions, and is not reactive with water. E.g. liquid nitrogenSpecial hazards (white): no code
3
0
0
致死量または濃度 (LD, LC)
700 mg/kg (ラット, 経口)
10,000 mg/kg (ウサギ, 経口)
250 mg/kg (マウス, 経口)[1]
安全データシート (SDS) ICSC 0955 (anhydrous)
ICSC 0738 (dihydrate)
関連する物質
その他の
陰イオン
フッ化スズ(II)英語版
臭化スズ(II)
ヨウ化スズ(II)
その他の
陽イオン
二塩化ゲルマニウム
塩化スズ(IV)
塩化鉛(II)
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
N verify (what is  N ?)

塩化スズ(II)(えんかスズ、tin(II) chloride または stannous chloride)は、化学式 SnCl2 で表される+2価のスズの塩化物で、無水物、2水和物がある。無水物は常温常圧において無色〜白色の結晶性粉末で、潮解性がある。2水和物は常圧において融点 37.7 ℃ の白色結晶で強力な還元剤であり、酸化剤や強塩基と激しく反応する。硝酸塩とは非常に激しく反応し、爆発の危険がある。空気中の酸素と反応して不溶性のオキシ塩化物を生じる。メタノールエタノール酢酸酒石酸などに可溶。

構造

塩化スズ(II)は非共有電子対を持つため、気体状態では折れ線形分子として存在する。固体状態では、1つの塩化物イオンが2つのスズイオンによって共有され、鎖型の結晶構造となっている。2水和物は1つの水分子がスズイオンに配位結合し、その水分子にもう1つの水分子が配位結合して構成されている。2水和物の結晶格子は、層をなした塩化スズ(II)の間に水分子を挟み込む形になっている。

性質

物理的性質

生成熱は-325kJ/mol、結合の長さは気体状態で242pm、結合がなす角度は気体状態で95°、固体状態で80°である。磁化率CGS単位系で−69.0である。

化学的性質

塩化スズ(II)は見た目上水に分解することなく溶解するが、溶液を希釈すると加水分解がおこり、白色沈殿の塩基性塩が生成する。この時、次の式の平衡が成立している。

球棒モデルで表したSnCl2の構造[3]

ゆえに、透明な塩化スズ(II)の溶液を長時間保持する場合、ルシャトリエの原理より溶媒は塩酸とする必要がある。また、塩化スズ(II)は空気に触れることで空気中の酸素と反応して酸化され、次の反応を起こす。

SnCl2による芳香族ニトロ化合物の還元

この他に、ニトリルから塩化イミドイル英語版)を経由してイミンを合成し、それを加水分解させて芳香族アルデヒドに変換するスチーブン合成などに用いられる[9]

この反応は芳香族ニトリル(Aryl-CN)においてよく進行する。関連する反応として、アミド五塩化リンで処理して塩化イミドイルに変換するソン・ミューラー(Sonn-Müller)法がある。

スチーブン合成は、現在は水素化ジイソブチルアルミニウムの還元に取って代わられたため、あまり行われていない。

スチーブン合成

また、塩化スズ(II)にはキノンヒドロキノンに還元するはたらきもある。

EUでは、塩化スズ(II)はE番号E512として食品添加物に認定されている。缶詰や瓶詰の食品用に、保色剤英語版酸化防止剤として使われている。

塩化スズ(II)は放射性核種血管造影法英語版において、テクネチウム99m英語版)の過テクネチウム酸塩血球に結合しやすくなるように放射性物質を減らすために使われている。

溶融した塩化スズ(II)は酸化して、緻密な結晶構造を持つ酸化スズ(IV)に変化することがある[10] [11]

脚注

  1. ^ Tin (inorganic compounds, as Sn)”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所英語版(NIOSH). 2025年10月10日閲覧。
  2. ^ Record 労働安全衛生研究所(IFA)英語版発行のGESTIS物質データベース
  3. ^ J. M. Leger, J. Haines, A. Atouf (1996). “The high pressure behaviour of the cotunnite and post-cotunnite phases of PbCl2 and SnCl2”. J. Phys. Chem. Solids英語版 57 (1): 7–16. Bibcode1996JPCS...57....7L. doi:10.1016/0022-3697(95)00060-7. 
  4. ^ H. Nechamkin (1968). The Chemistry of the Elements. New York: McGraw-Hill 
  5. ^ B. Cetinkaya, I. Gumrukcu, M. F. Lappert, J. L. Atwood, R. D. Rogers and M. J. Zaworotko (1980). “Bivalent germanium, tin, and lead 2,6-di-tert-butylphenoxides and the crystal and molecular structures of M(OC6H2Me-4-But2-2,6)2 (M = Ge or Sn)”. 米国化学会誌 102 (6): 2088–2089. doi:10.1021/ja00526a054. 
  6. ^ W. L. F. Armarego, C. L. L. Chai (2009). Purification of laboratory chemicals (6 ed.). The United States of America: Butterworth-Heinemann 
  7. ^ 金精錬フォーラム
  8. ^ F. D. Bellamy and K. Ou (1984). “Selective reduction of aromatic nitro compounds with stannous chloride in non acidic and non aqueous medium”. テトラヘドロン・レターズ英語版 25 (8): 839–842. doi:10.1016/S0040-4039(01)80041-1. 
  9. ^ Williams, J. W. (1955). “β-Naphthaldehyde”. Organic Syntheses (英語).; Collective Volume, vol. 3, p. 626
  10. ^ A.R.Kamali, Thermokinetic characterisation of tin(11) chloride, J Therm Anal Calorim 118(2014) 99-104.
  11. ^ A.R.Kamali et al.Transformation of molten SnCl2 to SnO2 nano-single crystals, Ceram Intern 40 (2014)8533-8538.

参考文献

関連項目




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