唯一の安全な避難階段、有効に使われず
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)
「千日デパート火災」の記事における「唯一の安全な避難階段、有効に使われず」の解説
7階プレイタウンは地下1階と屋上を連絡する4つの階段A、B、E、Fに繋がっているが、そのうちの階段A、F出入口については平時においても非常扉が常時施錠されていて使用不可能な状態にあった。7階のA階段出入口は、非常扉の全面に看板を貼り付け、施錠するとともに扉を完全に塞いで使用そのものができない状態になっていた。F階段出入口は、非常扉2枚(観音開き。常時施錠)と電動シャッター(常時閉鎖かつ電源切)で構成されていたが、ホールに直結した電動シャッターは全面がビロードの幕で覆われ、ホール側はベニヤ板で囲いがされ塞がれていた。その前にはボックス席が置かれていて非常時に使える状態ではなかった。またE階段出入口については、非常扉がホステス更衣室に直結していることから、デパート営業中にはホステスたちがE階段を利用してデパート売場内へ自由に出入りしていたことが確認されていて、同非常扉の施錠はデパート閉店後(21時)に限られていた。ただし事務所に保管されていた鍵で解錠することは任意でおこなえた。非常時にプレイタウン滞在者が誰でも利用可能な避難階段は、防火扉2枚で遮蔽されたバルコニー付きの特別避難階段「B階段」(特異火災事例の図面を参照)が唯一安全に使用可能な階段だった。B階段は平素から事実上プレイタウン専用の階段になっており、プレイタウンの営業中は地下1階と7階の扉に鍵は掛けられておらず、関係者が自由に使用することができた。またB階段は、地下1階と7階を除いて、同階段各フロア出入口は常時施錠されており、火災発生時に煙や火炎の流入を抑え、B階段内を煙による汚染から防ぐ機能を備えていた。 火災の初期に消防隊員の1人がB階段を駆け上がって内部探索をおこなった際に、4階まではまったく煙も炎もなく、難なく昇れたという。ところが5階まで来たとき、上階から黒煙が降り注いできて消防隊員の行く手を遮った。それでもなんとか6階まで行ってみたが、それ以上の進入は不可能だった。それは、B階段からの自力脱出者2人が7階B階段の防火扉2枚を開放したまま脱出したため、7階から噴出した猛煙がB階段にも流れ込んだためである。つまり、7階のB階段出入口の鉄扉2枚が完全に閉まっていた状態なら、B階段はすべての階で安全な状態になっていたと考えられ、刑事裁判においても裁判所は「B階段こそが安全確実に地上へ避難できる唯一の避難階段である」と認定した。ところが7階B階段出入口はクロークの奥にあり、人目に付かないように扉が常に幕で覆われていた。扉の上に誘導灯も備え付けられていないことから、その存在が判らないようになっていた。防火責任者らによって避難誘導もなされなかったことから、B階段から避難できたのはわずか2人だけであり、本件火災において唯一の安全な避難階段が有効に使われなかったことで人的被害が拡大した。
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