口嚼ノ酒(くちかみのさけ)とカビの酒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 09:39 UTC 版)
「日本酒の歴史」の記事における「口嚼ノ酒(くちかみのさけ)とカビの酒」の解説
米を原料とした酒であることが確実な記録が日本に登場するのは、『三国志』の時代から約500年も後のことになる。その最古の記述は二つある。 口嚼ノ酒 一つは『大隅国風土記』逸文(713年(和銅6年)以降)である。大隅国(今の鹿児島県東部)では村中の男女が水と米を用意して生米を噛んでは容器に吐き戻し、一晩以上の時間をおいて酒の香りがし始めたら全員で飲む風習があり、「口嚼(くちかみ)ノ酒」と称していたという。口噛み酒は唾液中の澱粉分解酵素であるアミラーゼ、ジアスターゼを利用し、空気中の野生酵母で発酵させる原始的な醸造法であり、東アジアから南太平洋、中南米にも分布している。現代日本語でも酒を醸造することを「醸(かも)す」というが、その古語である「醸(か)む」と「噛(か)む」が同音であるのは、この口嚼ノ酒に由来すると言われているが、異説もある。詳細は「口噛み酒#「醸す」の語源」を参照。 カビ(麹)の酒 もう一つは『播磨国風土記』(716年(霊亀2年)頃)である。携行食の干し飯が水に濡れてカビが生えたので、それを用いて酒を造らせ、その酒で宴会をしたという記述が見える。こちらは麹カビの糖化作用を利用した醸造法であり、現代の日本酒のそれと相通じるものである。このように、奈良時代の同時期に口噛みによるものと麹によるものというふたつの異なる醸造法が記録されている。 のちの万葉集(759年以降成立)にも濁り酒、黒酒、白酒、糟湯酒などが歌の中で読まれている。
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