取り違え花婿
『浅茅が露』 中納言が一条大宮に荒れはてた屋敷を見出し、物語する女たちをかいま見していたところ、その家の中君の恋人と間違えられ、あやうく中へ引き入れられそうになる。
『狭衣物語』巻3 狭衣が故飛鳥井女君との間にもうけた遺児は、一品宮(=後一条帝の姉)の養女となった。狭衣は、遺児見たさに、夜更けに一品宮里邸の戸口に立つ。それを権大納言が見咎め、「狭衣が一品宮のもとに通っている」と人々に言いふらす。狭衣は、10歳ほども年上の一品宮と結婚せざるを得なくなる。
『増鏡』第9「草枕」 前斎宮(=愷子内親王)が、愛人である大納言実兼の訪れを待っていた。夕闇の頃、大臣師忠が忍び歩きの途中、前斎宮邸の近くで実兼の車に行き会う。師忠は実兼の車を避けるため、たまたま開いていた前斎宮邸の門内に入る。すると前斎宮邸では、師忠を実兼と間違えて屋内に招き入れた。門外の実兼は、「師忠も前斎宮と関係を持っていたのか」と思い、帰ってしまった。
『雪たたき』(幸田露伴) 夫が海外貿易で留守の間に、妻が密夫を引き入れる。雪の夜、下駄の歯につまった雪をたたき落とす音をいつもの合図と間違えて、侍女が通りかかりの男を屋敷内へ入れてしまう。
*闇の中で間違えて、夫とは別の男と関係を持つ→〔身代わり〕5の『大経師昔暦』「大経師内」・〔闇〕3aの『デカメロン』第9日第6話。
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