反戦運動家による暴言と闘争的言辞法理の衰退
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 09:46 UTC 版)
「ヘイトスピーチ」の記事における「反戦運動家による暴言と闘争的言辞法理の衰退」の解説
1970年には、ベトナム戦争反戦運動家のポール・R・コーエンが、「Fuck the Draft」(徴兵くそくらえ)という上着をLA郡裁判所内で着用したため、州法415条の「不快な行為(offensive conduct)」に当たるとして逮捕され、有罪判決を受けた。 連邦最高裁では「Fuck the Draft」という言葉について「多くの者にとって、この自由の直接的な結果は、しばしば単なる言葉の上での騒動、不和、不快な言葉として現れてくる。しかしながら、これらは…実際には開かれた討論のプロセスにより我々が達成することの出来るより広大な永続的な価値の必然的な副作用である。時々雰囲気が不協和音で満たされていると思われることは、ある意味では弱点のあらわれではなくて、長所のあらわれである」 とし、さらに「州は、公開討論を我々の間でもっとも神経質な人にとって文法上心地よいところへときれいにする権限を有していない」 「(Fuckのような)禁句は、おそらくは他の部類のものよりも好まれないけれども、しかしながらある人の下品さが別のひとの抒情詩ということがしばしば真実となるからである」 として、このような闘争的言辞を禁止し得ないと判示し、「この最高裁判決において、価値の低い不快な言葉であるとしても、言葉の不快さを理由として公開討論から排除することは、憲法上正当化されない」とする判決が出された。 また、1971年のGooding事件では同じくベトナム戦争反戦運動家が警官に対して「Son of a bitch,殺すぞ」と侮辱的かつ攻撃的な発言を浴びせたため、ジョージア州法(コード)S26-6303にもとづき逮捕され、ジョージア州裁判所で有罪となった。その後の連邦最高裁では、「ジョージア州法(コード)S26-6303に対して、法律は慎重に保護されない言論のみを処罰するように解釈しなければならず、保護される言論に適用されるべきではない」として、過度広汎に表現を規制することは憲法違反との判決が出された。警官に対する罵倒が「闘争的言辞」に該当するかについては、該当しないとされ、この判例によって闘争的言辞の法理は衰退した。
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