原子及び物理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/06 10:27 UTC 版)
テネシンは周期表上で5つのハロゲンの下、17族に位置する。ハロゲンは7つの価電子がns2np5型に配置している。テネシンの場合は、周期表の第7周期にあり、傾向から価電子の配置は7s27p5と予測され、多くの面でハロゲンと同様に振る舞うことが予測される。しかし、17族は下に行くに従って金属性が大きくなり、例えばヨウ素は固体では金属光沢を見せ、アスタチンは他のハロゲンとかなり異なる性質からしばしば金属に分類される。同様に、周期表の傾向から、テネシンは揮発性貧金属の性質を持つことが予測される。 計算はこの予測の正しさを裏付けるが、既知のテネシン同位体の半減期が短すぎるため、実験的な確認には至っていない。テネシンとその他のハロゲンの大きな違いは、スピン軌道相互作用等が大きな原因の生成しやすさである。超ウラン元素の電子は、光速に匹敵するほど速く動くため、スピン軌道相互作用は特に強くなる。テネシン原子では、このせいで7sと7p軌道の電子のエネルギー準位が低くなり、対応する電子を安定化させるが、7p電子エネルギー順位のうち2つが他の4つよりもより安定化される。7s電子の安定化は、不活性電子対効果と呼ばれ、7p小軌道(subshell)を安定度により分ける効果は、subshell splittingと呼ばれる。コンピュータ化学者は、この分割を、7p小軌道の軌道角運動量の1から1/2(安定度高)と3/2(安定度低)への変化と理解する。7p小軌道の分割を考慮して、テネシンの価電子配置は7s27p21/27p33/2と書かれることもある。 他の電子準位の違いも存在する。例えば、6d電子順位(これも4つが6d3/2、6つが6d5/2に分割されている)は励起され、7s軌道のエネルギーに近くなっているが、テネシンについては予測されていない。7p1/2と7p3/2の準位の差は、9.8 eVと異常に大きい。アスタチンの6p小軌道分割はわずか3.8 eVであり、これらの効果により、テネシンはほかのハロゲンと異なる性質を持っている。 テネシンの第1イオン化エネルギーは7.7 eVと予測されており、周期表の傾向どおり他のハロゲンよりも低い。電子親和力についても族の中で最も小さく、2.6eVまたは1.8 eVと予測されている。仮想の水素様テネシン原子の電子は非常に高速で動くため、その質量は相対論効果のため、不動電子の1.9倍になる。対照的に、水素様アスタチンの場合は1.27倍、水素様ヨウ素の場合は1.08倍である。相対性法則の単純な外挿により、原子半径の収縮が示される。さらに計算すると、1つの共有結合を形成するテネシン原子の半径は165 pmであるが、アスタチンの場合は147 pmであった。7つの最外殻電子を除去するとついにテネシンの方が小さくなり、テネシンの半径が57 pm、アスタチンの半径が61 pmとなる。 テネシンの融点及び沸点は未知であるが、初期の論文では、それぞれ350-500℃、550℃や350-550℃、610℃と予測されていた。これらの値はアスタチンやより軽いハロゲン以上であり、周期表の傾向と合致する。その後の論文では、テネシンの沸点が345℃(アスタチンの沸点は309℃、337℃、370℃等と予測されるが、実験的な値としては230℃、411℃が報告されている)。アスタチンの密度が6.2-6.5 g/cm3なのに対し、テネシンの密度は、7.1-7.3 g/cm3と予測され、周期表の傾向と合致する。
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