初代桂春團治の「へっつい盗人」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/17 07:49 UTC 版)
「へっつい盗人」の記事における「初代桂春團治の「へっつい盗人」」の解説
初代桂春團治がSPレコードに複数回録音した『へっつい盗人』が今日演じられている型である。喜六と清八が口論するシーンで切る演じ方は、SPレコードの非常に短い再生時間の制約で生まれたものである。 初代春團治は録音を通じて以下のようなクスグリを創作した。 冒頭部、清八が「何か祝いしたいんやけど。どんなンがええやろ?」と問うと、喜六が「どうでっしゃろ、地震の子なんか」と答える。清八が「おい、地震の子? そんなんどこにあンねん」と訊きただすと、喜六は「さあ、横浜にいうて(=注文して)やってね、2匹くらい小包で送らして……」と答える。この奇抜な会話は関東大震災をテーマにしたものである。 清八の言う「堺のオッサン」について、喜六が「何かくれますか」と訊く。清八が「時計くれよンで」と答えると、喜六は「やはり金時計でっか」と喜ぶ。清八はそれをたしなめ、「アホ、ムキトケイ(=無期徒刑)じゃ」 夜、盗みに集合する際、喜六が「盗人の開店祝い」と称して、長屋の家主宅から盗んだモーニングを着てくる。 擬声語を用いるクスグリは、初代春團治が考案した。カラッ、カラコロカラコロカラコロカラ(竹の垣を動かす音) カラ、カッチンカッチン、ドンガラガッチャ、プップウ(垣を動かした拍子に石灯籠の頭が落ち、三輪車のラッパを押さえてしまう音) - このあと清八が「おい、何でふたつ『プップウ』やねん」と訊くと、喜六が「あんましええ音やったさかい、もう一回鳴らした」と答える。 ジャジャー、ジャージャージャアアアア。ポトン、チョピン(道具屋の店先で小便をする音) 柳家金語楼は来阪した折、初代春團治が『へっつい盗人』を演じた現場に立ち会い、小便の擬声語を聞いて感動したといい、以下の証言を残した。 「私あの話を聞きましてほとほと舌を巻きましたね」「時間計ったらあの小便している間がレコード一枚分たっぷりある。私、東京へ帰ってこれを寄席で試しにやってみましたが一分とももたない。客を飽きさせないで、あれを三分間もやれるというのはよっぽど味のある名人芸でなきゃできませんよ」
※この「初代桂春團治の「へっつい盗人」」の解説は、「へっつい盗人」の解説の一部です。
「初代桂春團治の「へっつい盗人」」を含む「へっつい盗人」の記事については、「へっつい盗人」の概要を参照ください。
- 初代桂春團治の「へっつい盗人」のページへのリンク