公訴時効停止効の存否に関する問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 01:17 UTC 版)
「公訴時効」の記事における「公訴時効停止効の存否に関する問題」の解説
起訴状不送達の場合 起訴状謄本が法定期間内に送達されなかった場合に、公訴時効停止効が生じるかという問題がある。この点につき、検察官が訴追意思を明示している以上、可罰性の減少や証拠の散逸は阻止されているとして公訴時効の停止を認めた判例がある。これに従い、1995年の日本ヘルシー産業社長脱税事件(群馬県高崎市の健康食品販売会社社長脱税事件)では、1999年3月から所在不明のまま法人税脱税の罪で起訴し、起訴状不到達を理由に裁判所が公訴棄却を決定すると検察が再び起訴することを繰り返し、2007年3月に元社長が身柄拘束されるまで計42回起訴を繰り返すことで公訴時効(5年)の進行を止めた事例がある。また、香川県高松市での特別老人ホームの建設を巡る汚職事件で逮捕状が出ていた元同市議・宮本和人について、2005年に香川県警が事情聴取を行った後逃亡を続けるようになったため、高松地検が、時効の完成を防ぐため、容疑がかかっている2件の贈賄罪で再起訴を繰り返した事例がある。なお、うち1件については、2010年2月27日に時効となった。 この判例の立場に対し、起訴状が不送達の場合に公訴時効は停止しないとする見解もある。逃亡しているわけではない被告人にとって、不知の間に停止することは不当であるという点、公訴時効の遡及的失効を特に規定する271条2項を重視することを理由とする。 訴因不特定の場合 訴因不特定を理由として公訴棄却された場合にも、公訴時効停止効が生じるかという問題がある。この点につき、検察官の訴追意思は訴因を基準に考えるべきであるとして、訴因不特定の場合は訴追意思が明示されていないため公訴時効は停止しないと考えられている。
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