公益通報の懲戒解雇事由該当性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/12 14:37 UTC 版)
「日本ボクシングコミッション事件」の記事における「公益通報の懲戒解雇事由該当性」の解説
2012年2月3日の公益通報調査会では、軽率な行為としてA1に強く反省を促しつつ、虚偽告訴に相当するとはいえず、また必ずしもA1が故意にJBCの混乱を狙ったものとは認められず、あくまでJBCのガバナンスを慮って行ったものと判断されている。 「そもそも[2011年9月29日付]公益通報及び[同年11月7日付]公益通報のいずれもいわゆる内部通報であるところ、平成23年5月31日にB5らがマスコミ等に対して行った、『原告、B14ら4名の飲食代1万7180円を被告の経費として処理した行為が背任罪に当たる。』旨の外部公益通報[略]においてさえ、何ら被告事務所内の風紀の乱れや被告の損害について問題にされていないのであるから、[9月29日付]公益通報や[11月7日付]公益通報のような内部通報によって被告事務所内の風紀が乱れ、又は被告に損害が生じたとは考え難いのであり、本件全証拠によっても、A1によるこれらの公益通報によって被告に風紀の乱れや損害が生じたことをうかがわせる事情は認められない。」 そもそもこれらの公益通報自体がJBCの主張する懲戒解雇事由に該当するとはいえない以上、これらの公益通報に協力しただけの安河内について懲戒解雇事由と認められないことは明らかである。 「被告のガバナンスについては、本件調査報告書においても被告の組織及び内部統制の改善を図るべきと付言されていたにもかかわらず[略]、本件降格処分以降、解雇権限を持たないB4及びB5が正当な理由もなくA3を解雇したり[略]、経理内規に従って処理すべき試合の放送承認料やテレビ局の中継の承認料が経理担当者への事前の相談もなく勝手に決定される事態が頻発したりし[略]、また、本部事務局では、B4が事務局長になって以降、事務局全体のミーティングが行われなくなり、B4は週に2、3日、各数時間程度出勤するのみであったため、職員が誰の指示で何をすればよいか、業務の報告を誰にすればよいか明確でない状態となっており[略]、さらに、指定暴力団員の観戦等、被告の対外的な対応にも問題が生じていたことがうかがわれる[略]。」 降格処分以降の上記のような状況や、安河内が本部事務局長在任中にJBCの組織体制の改革や反社会的勢力の排除等に積極的に取り組んでいたことに照らせば、安河内が「JBCのガバナンスが機能を喪失しており、これを正すにはB1に現状を認識してもらう必要がある」と考え、B1にその現状を認識してもらうため、客観的な資料を集め、A1らによる公益通報等にも積極的に協力していたという安河内の説明には十分に合理性があると認められ、全証拠によっても安河内がJBCの組織の弱体化、内部秩序の壊乱およびガバナンスの崩壊を意図してA1らによる公益通報等に関与していたと認めることはできないから、懲戒解雇事由にあたるものと認めることはできない。このようにJBCが主張する懲戒解雇事由はいずれも認めることはできないから、仮に手続が違法とまではいえないとしても懲戒解雇処分は無効である。
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