作風と系譜
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 07:00 UTC 版)
高い描写力に裏打ちされた明快な色彩と構図、驚きや面白みを潜ませる機知的な趣向は、敢えて余情を配するかのような理知的な画風を特徴付けている。琳派の掉尾を飾るとも評されるが、美人画や風俗画などの単に琳派や抱一様式に収まらない、個性的な要素を多く含んでいる。描き方も、本来は仏画に用いる技法である表具にも絵を施す「絵描装(描表装)」をしばしば用い、本紙の絵に多様なデザインを取り合わせ、時に本紙の中に侵入するだまし絵のような効果を与えている。こうした肉筆画の一方、其一は狂歌本挿絵や狂歌摺物、団扇絵版錦絵や千代紙といった版下絵の仕事も積極的にこなしている。 雅趣豊かな抱一の作風とは対照的に、硬質で野卑とも言うべき感覚を盛り込んだ其一の作品は、長く国内の評価が低迷し、作品の流失と研究の立ち遅れを余儀なくされた。しかし、近年の所謂「奇想の絵師」達の評価見直しが進むに連れて、琳派史上に異彩を放つ絵師として注目を集めつつある。平成20年(2008年)東京国立博物館で開かれた『大琳派展』では、宗達・光琳・抱一に並んで其一も大きく取り上げられ、琳派第4の大家として認知されつつある。 息子に、同じく琳派の絵師となった長男鈴木守一、起立工商会社で細密な図案を多く残した次男鈴木誠一がいるが、絵師としては父に及ばなかった。弟子に村越其栄、市川其融、稲垣其達、中野其明、中野其豊、村松其翠、など。また、幕末明初の絵師・河鍋暁斎は其一の次女を最初の妻にしている。これは其一の長女が、暁斎の父と同じ御茶の水定火消の与力海津某に嫁いでおり、その縁によるものだったというが、共に本来の画域以外にも関心を示す姿勢を持っていたことは共通している。
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