作中の矛盾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:55 UTC 版)
これまで見てきたように『西遊記』は一人の作者が最初から書き上げた小説ではないこともあり、作中に矛盾する設定もいくつか見られる。 孫悟空が操る觔斗雲は、一跳びで十万八千里(長安から天竺までの距離と同じ)を飛ぶことができる。しかし三蔵法師が凡胎(通常の人間)であるために雲に乗ることができず、一行は徒歩・騎乗で旅しているという設定である。しかし、第46回車遅国で三大仙の虎力大仙と法力比べを行った際、悟空は五十脚の机をくみ上げた上に三蔵を雲に乗せて座らせている。また第71回では妖怪の賽太歳にさらわれた朱紫国皇后(通常の人間)を救出した後、朱紫国まで三千里の帰路を觔斗雲に皇后を乗せて戻っている。これらの描写は、人間を雲に乗せることはできないという基本設定と矛盾している。 また、第65回小雷音寺で鐃鉢に閉じ込められた孫悟空は、如意金箍棒を錐に変えて亢金龍の角に穴を開け、脱出している。しかし同様の状況である第75回の獅駝洞では、陰陽二気瓶に閉じ込められた時に悟空は、金箍棒を使うことに思い至らず、考え抜いたあげく第15回で南海菩薩からもらった「救命毫毛(命の毛)」という三本の硬い毛を錐に変えて穴を開け、脱出する。同一の作者による記述であれば、以前のことを思い出せないということは考えづらく、小雷音寺の段と獅駝洞の段の執筆者が違うことは明らかである。
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