低迷と希望
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 15:45 UTC 版)
防犯環境設計のうち、「領域性」を高める手法として、重要であるにもかかわらず、日本での取り組みが遅れているのがゾーニング(すみ分け)だ。ゾーニングが低調なのは、日本には城壁都市づくりの経験がないからである。その結果、海外のゾーニングと比較すると、日本の公園と公衆トイレのデザインやレイアウトが、際立って異様に見える。つまり、日本の公園と公衆トイレは、諸外国のそれと比べて、より多くの犯罪機会を生んでいると言わざるを得ない。 一方、海外では、ゾーニングが徹底している。例えば、2011年にアメリカの首都ワシントンD.C.に造られたリドロイト公園には、フェンスで仕切られたスペースが、幼児用遊び場、児童用遊び場、小型犬用運動場、大型犬用運動場、コミュニティ農園の合計5つある。徹底したゾーニングで、領域性を高めれば、住民の多様なニーズに応えながらも、誘拐は阻止できる。 チリの首都サンティアゴの南に位置するプエンテアルトでは、市長が防犯環境設計を本格的に採用した。モンテ・アンディーノという名の住宅団地には、1つしかない橋を渡らなければアクセスできず、敷地全体もフェンスで囲まれている。つまり、領域性が高い。フェンスの外に家はないので、囲っても街を分断するゲーテッドコミュニティにはならず、フェンスの内外で安全格差は生じない。斜面の土地は棚田状に整備され、コンクリート擁壁なしでフェンスだけが小刻みに設置されている。そのため、家も道も、監視性が高くなっている。 防犯環境設計の導入は、海外に比べて非常に遅れているのが現実だが、防犯環境設計を十分に実践していると考えている関係者も多い。例えば、公園の緑を減らして、「防犯環境設計を実施した」と言ったりしている。しかし、そこには、ゾーニングという発想がない。海外では、子ども向けのエリアには、緑はほとんど置かず、大人向けのエリアには、たくさんの緑を置いている。 日本が抱える問題点を解決しようとして、富山県では、「防犯上の指針」が改定された。
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