人柄・句柄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/10 00:54 UTC 版)
井月は独特な語彙をよく用いているが、口癖としてもっとも著名なのが「千両千両」である。 謝辞、賞賛詞、賀詞、感嘆詞として使用するは勿論、今日は、左様ならの挨拶まで、唯この千両千両……を以て済ます — 井上井月、『井月全集』における高津才次郎の記述[要ページ番号] という。饗応の際に相好を崩して「千両千両」と繰り返したという逸話が、数多く言い伝えられている。 井月の酒好きは当時、伊那谷一帯に知れ渡っていた。当然、井月には酒にまつわる句が数多く残されている。秋の新酒を詠んだ「親椀につぎ零(こぼ)したり今年酒」、雪の日に残した「別れ端のきげむ直しや玉子酒」など、季節それぞれの酒を句にしている。また、新酒が出来たことを知らせる酒屋の杉玉を指す「さかばやし」を詠み込んだ「油断なく残暑見舞やさかばやし」「朝寒の馬を待たせたさかばやし」などの句は、幕末から明治初期の伊那谷の一点景を表している。 井月は接待の酒肴や趣を逐一記録しており、現存する日記などを合わせると、明治16年12月から明治18年4月までの約1年半の、伊那谷における井月の寄食寄宿生活の動向がうかがえる。その中で、おのおのの家造りの濁り酒を「手製」と呼んで鍾愛している。一方で、家の主人がいなかったため家人に粗末に扱われたり、厄介払いをされた場合は、日記に「風情なし」「粗末」、さらには「酒なし」「風呂なし」といちいち書き留める性格であった。 井月は発句ばかりでなく、連句を巻くことも多かった。『井月全集』には64篇の連句が残されている。
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