二次性能動輸送体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/21 14:37 UTC 版)
二次性能動輸送を司る輸送体は、キャリアー(Carrier:運搬体)とも呼ばれる。膜の両側の電気化学ポテンシャル差、すなわち濃度勾配とイオンによる電位差をエネルギー源として物質を輸送する。このエネルギー源として原核生物ではプロトンが、真核生物ではナトリウムイオンが使われる例が多い。酵素と同じ速度論的性質(ミカエリス・メンテン式)を示すので、基質を結合した中間体を経て輸送するものと考えられる。そのため、(正確には酵素ではないが)透過酵素またはパーミアーゼ(Permease)とも呼ばれる。 輸送の様式により、膜内外にある2つの物質を互いに交換する対向輸送体(Antiporter)と、同じ方向に送る共輸送体(Symporter)、さらに1つの物質だけを送る単輸送体(Uniporter)に分けられる。単輸送体は機能的には促進拡散を行うチャネルと同じであるが、構造・機序が異なるため区別する。 これらのタンパク質の多くは、膜貫通領域を12個ないし14個持つという構造的共通点があり、MFS(Major Facilitator Superfamily)スーパーファミリーとしてまとめられる。 対向輸送体には、Na+/H+対向輸送体(例えば大腸菌のNhaA, NhaBなど)、H+/抗菌薬対向輸送体(いわゆるH+共役型多剤排出トランスポーター(例えば大腸菌のAcrB, MdfA, EmrEなど))やNa+/抗菌薬対向輸送体(いわゆるNa+共役型多剤排出トランスポーター(例えば大腸菌のNorMなど))などがある。 共輸送体には、Na+/Cl--共輸送体、Na+/アミノ酸共輸送体(例えば大腸菌のNa+共役型セリン取り込み輸送体SstTなど)、Na+/糖共輸送体(例えば腸炎ビブリオのNa+共役型グルコース取り込み輸送体SglSなど)やH+/糖共輸送体(大腸菌のラクトースオペロンに含まれるlacY遺伝子の産物(H+共役型ラクトース取り込み輸送体)などがある。 単輸送体の代表的なものには、グルコースキャリアーがある。
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