乃美尾工区
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/25 03:45 UTC 版)
乃美尾工区は、入口からの全長790メートルの工区である。他の工区は、1970年(昭和45年)3月末には発注し順次着工していたが、乃美尾工区の範囲については地質が悪いため再調査を行っており、工法を再検討したうえで1971年(昭和46年)9月に発注された。結果的に隣接する楢原工区と同じ飛島建設が担当することになった。 地質は基盤の花崗岩の上に砂礫やシルト、凝灰質粘土、河床堆積物などが水平に層をなしており、土被りが浅く、上部に水田がある区間もあった。こうしたことからトンネル掘削時には湧水が多いと予想された。水位を低下させ掘削中の湧水を低下させるため、深井戸(ディープウェル)を合計11本掘削し、揚水を行った。数日程度で揚水量は低下し、実際の掘削時にはほとんど湧水がなくなった。一方、トンネル上部にある民家で井戸水を使用しており、その渇水が予想されたことから、あらかじめ新たな給水用の井戸を用意して配管で各民家に給水できるように対策を行っており、実際に渇水が発生した際に給水を行った。大多田地区には、地質と湧水の確認のための大多田立坑も掘削され、もし本坑の掘削が止まった場合にはこの立坑からの掘削も可能なように配慮された。 地下水位が高く、地盤が弱くて湧水が多いと予想されたことから、側壁導坑先進上部半断面工法(サイロット工法)が採用された。これはトンネル底部の両側面にそれぞれ導坑を掘削し、トンネルの壁となる部分の覆工を打設した後、トンネル上半部を掘削して天井の覆工を打設、その後全断面へと切り広げる工法である。導坑の掘削は下り列車進行方向右側の導坑から開始され、当初の予想より湧水が少なかったこともあり順調に掘削された。全体の内659.3メートルは坑口から掘削し、残りの130.7メートルは立坑から掘削した。また左側導坑は右導坑より約50メートル遅れて掘削し、途中9か所で左右連絡坑道を掘削した。続いて上部半断面の掘削を行い、先に掘削完了していた楢原工区側からも178メートルを掘削した。 乃美尾工区は平均月進55メートルで、総工費8億2000万円であった。
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