与謝の神楽
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 00:47 UTC 版)
下宮神社と武神社氏子に継承される神楽は、「女神楽」と称される。その理由は、宵宮中心に行われる「カマド清め」が、他地域では家には上がらず玄関や庭先で行われるのに対し、与謝区では家の中で舞われるためとする説もあるが、明確ではない。 演目は6曲あり、「カマドキヨメ」「アクマバライ」「スズノマイ」は獅子1人、「ショウガカリ」「ツルギノマイ」「ランノマイ」は獅子2人で舞う。このうち、「ツルギノマイ」「ランノマイ」は四方舞のみで舞う。すべての演目で笛を用いるが、その人数は二方舞では2人、四方舞では4人とされる。締め太鼓は「スズノマイ」にのみ用い、鋲太鼓は四方舞ではすべての演目で用いるが、二方舞では「スズノマイ」には用いない。天狗は、四方舞における「アクマバライ」「ショウガカリ」「ツルギノマイ」にのみ登場する。「アクマバライ」と「ショウガカリ」にのみ、掛け声が入り、「アクマバライ」では「家内安全、五穀豊穣、速やかに悪魔祓いせよ」という口上から舞がはじまり、途中に見物客からの「ハロウタ、ハロウタ、アクマヲハロウタ(祓った、祓った、悪魔祓った)」という掛け声がかかる。「ショウガカリ」では、口上はないが、途中に見物客からの「ハアー、ヨウマウ、ヨウマウ(良く舞う、良く舞う)」という掛け声がかかる。 神楽に用いられる笛は横笛、40cmほどの長さの6穴で、すべて手作りされる。冬場に刈り取ったシノブタケを油抜きして1~2年間、日蔭で乾燥させた後に穴をあけ、詰め物などで音を調整する。奏でる囃子はすべての曲で異なるが、それぞれの囃子に名称や楽譜などはなく、熟練の年長者に習うか、見様見真似で継承された。 一方、柴神社氏子に継承される神楽では、「練り込み」「ショウガカリ」「ハナの舞」「幣の舞」「ラン」「剣」の6演目を伝える。このうち、「練り込み」「幣の舞」「ラン」が鈴の舞で、「練り込み」「幣の舞」では御幣を持つ。「ショウガカリ」「ハナの舞」「剣」はツルギの舞で、天狗が登場するが、この天狗は新人が舞うものと定められる。 「練り込み」は場所取りの舞で、すり足で舞うところに特徴がある。 「ハナの舞」には天狗の鼻と花代をかけた物語がある。花代の番をしながら眠ってしまった天狗に、獅子がいたずらをしかけるストーリーで、居眠りする天狗を獅子が狙う間に、「よっ、えい」「眠ってハナを取られるなど―」といった太鼓うちの掛け声が入る。獅子は天狗の鼻や頭に噛みつき、痛がる天狗が「太鼓打ちさん、太鼓打ちさん、ネコだかネズミだか、ハナを取りました。もうハナの番はよういたしません」と言い、太鼓打ちが応えて「それはネコでもネズミでもない、お神楽さんじゃ。お神楽さんがハナを欲しいとおっしゃる。機嫌よく振り掛けてあげませー」と言うと、天狗が獅子にハナ(笹につけた紙吹雪)を振りかけ、一緒に踊って終幕となる。 神楽に用いられる笛は7穴で、主に既製品だが手作りする人もいる。笛は中学生の頃から習い始め、全5曲、譜面はなく、すべて口伝で伝えられる。
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