不連続な閉作用素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/08/14 15:53 UTC 版)
自然に生じる線型不連続作用素が閉作用素となることは多く、そのような作用素のクラスは連続作用素のクラスと様々な特徴を共有している。連続性についての問いと同様、与えられた空間上の任意の線型作用素が閉であるかと考えることは意味を成す。閉グラフ定理は完備な定義域上の至る所定義された閉作用素が連続であることを保証するから、不連続閉作用素を考える文脈では至る所定義されるのではない作用素を許さねばならない。至る所定義されたものでない作用素の中でも、密に定義された作用素を考えて一般性を失わない。 さて、T は定義域 Dom(T) を持つ(偏)写像 X → Y とし、至る所定義されたものでない作用素 T のグラフ Γ(T) は閉包 Γ(T) と異なってもよいものとする。グラフの閉包がそれ自身別の作用素 T のグラフとなっているとき、T は可閉 (closable) であると言い、作用素 T は T の閉包であると言う。 そうすると、正しい問いは「密定義作用素は必ず可閉であるか否か」であるということになる。答えは「必要条件ではない」である。つまり、任意の無限次元ノルム空間が、非可閉線型作用素の存在を許す。証明には選択公理を要するので、一般には非構成的である(今の場合でも、X が完備でないものとすれば、構成的な例は存在する)。 実は、閉包が X × Y 全体になるようなグラフを持つ線型作用素の例を与えることができる。そのような作用素は可閉でない。X を閉区間 [0, 1] から R への多項式函数全体の成す空間とし、Y を区間 [2, 3] から R への多項式函数全体の成す空間とする。これらはそれぞれ C([0,1]) および C([2,3]) の部分空間であり、従ってノルム空間となる。作用素 T は、多項式函数 x ↦ p(x) を [0, 1] 上で定義されるものから、同じ式で [2, 3] 上定義されたものへ写すものとする。ストーン-ヴァイエルシュトラスの定理の帰結として、この作用素 T のグラフは X × Y で稠密であり、極大不連続線型写像の一種を与える(至る所不連続な函数(英語版)を参照)。ここで X は完備でなく、このような構成可能写像が存在する場合を考えなければならないことに注意。
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