下オリーブ核の仮性肥大(olivary pseudohypertorophy)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 22:49 UTC 版)
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神経インパルスが伝わる方向と同じ向きに変性が進むことを順行性変性(anterograde transsynaptic degeneration)といい経シナプス変性のひとつとして知られている。経シナプス変性はある特殊な条件下では実験的に作成できるが剖検脳での検証は非常に限られている。経シナプス変性では眼球摘出による視束の変性によって外側膝状体の神経細胞が萎縮する例がよく知られている。順行性変性でよく知られているのが、皮質橋路変性による橋核細胞の膨化と下オリーブ核の仮性肥大である。 下オリーブ核の仮性肥大は、対側の小脳歯状核→上小脳脚→同側赤核→中心被蓋路→下オリーブ核を結ぶGuillain-Mollarretの三角の障害で起こることが知られている。下オリーブの仮性肥大の病変は残存する神経細胞の周囲の神経突起が腎臓の糸球体様に異様に変化することがある。この所見はHE染色と鍍銀染色で観察でき糸球体様構造(glomerular structure)という。糸球体様構造を示す神経細胞にはしばしば細胞質の空胞形成を認める。アストロサイトも増殖する。非常に大きく奇妙な形をしたアストロサイトが多いため一見腫瘍のようにもみえる。小脳歯状核病変では対側の下オリーブ核、橋背側中心被蓋路の病変では同側に変性が起こるのが特徴的である。口蓋帆振戦(口蓋帆ミオクローヌス)では下オリーブ核がペースメーカーであり、この部位の肥大によって細胞間のgap junctionの連絡が強まり同期して発火するようになるのが振戦の機序と考えられている。 また下オリーブ核の仮性肥大はスモン(SMON)やCJD、PSP、後索変性を伴う家族性ALSなどのような変性疾患など軸索損傷が明らかでない疾患でも認められることがある。
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